次期年金制度改革に関する議論の整理(案)が示されました(前半)(2024/12/25)
12月24日、第24回社会保障審議会年金部会が開催され、次期年金制度改革に関する議論の整理(案)が示されました。
検討されてきた事項のいくつかは意見がまとまらず、政府において検討を深めることとされています。
【被用者保険の適用拡大】
●短時間労働者への適用拡大
→ 企業規模要件については、撤廃する方向で概ね意見が一致
→ 賃金要件については、撤廃する方向で概ね意見が一致
→ 撤廃の時期に関しては、全国47都道府県で、8.8万円の賃金要件が実質的な意味を持たなくなる時期を踏まえて廃止すべきという意見があった
→ 最低賃金の減額の特例の対象となる者については、希望する場合に、事業主に申し出ることで任意に被用者保険に加入できる仕組みとする
→ 労働時間要件については、今回は見直さない
→ 学生除外要件については、今回は見直さない
●適用事業所の拡大
→ 常時5人以上の従業員を使用する個人事業所における非適用業種については、解消する方向で概ね意見が一致
→ 常時5人未満の従業員を使用する個人事業所については、今回は見直さない
●複数事業所の勤務者やフリーランス等
→ 複数の事業所で勤務する者の労働時間等を合算し、被用者保険を適用することおよび現行の適用事務の見直しを引き続き検討
→ フリーランス等への適用の在り方については、中長期的な課題として引き続き検討
●適用拡大を進める場合の事業所への配慮等
→ 準備期間の十分な確保、事業主や労働者への積極的な周知・広報、事務手続きや経営に関する支援に総合的に取り組むことが必要
→ 個人事業所への適用拡大の影響が大きいと考えられることから、企業規模要件の撤廃を優先して施行すべき。その際、現在50人超の企業規模要件を直ちに撤廃するのではなく、段階的に拡大すべきとの意見もあった
→ 保険者が分立する医療保険制度においては、適用拡大に伴い、保険者間での移動が生じることとなり、保険者の財政や運営に影響を与えることとなることから、さらなる適用拡大の検討にあたっては、医療保険制度の在り方についても着実に議論を進める必要がある
【「年収の壁」と第3号被保険者制度】
●単に手取り収入が減少しない仕組みの課題
→ 慎重な意見が多かった
●就業調整に対応した保険料負担割合を変更できる特例
→ 部会として意見はまとまらなかった。政府において、本部会での意見を踏まえて、本特例の妥当性や、仮に導入するとした場合の中小企業への負担軽減策を含めた具体的な制度案について、検討を深める必要がある
●第3号被保険者制度
→ 適用拡大を進めることにより、第3号被保険者制度の縮小・見直しに向けたステップを着実に進めるとともに、第3号被保険者の実態も精緻に分析しながら、政府に対して、引き続き検討することを求める
【在職老齢年金制度】
●見直しの方向性
→ 現行の在職老齢年金制度を見直すことで概ね意見は一致
→ 具体的な見直し案について、特定の案に意見はまとまらなかった。本部会での意見を踏まえて、政府において具体的な制度の見直し案について検討を行う必要があるが、検討結果によっては、基準額の引上げにとどまり、制度が存続する可能性がある
【標準報酬月額上限の見直し】
●見直しの方向性
→ 改定のルールを見直して新たな等級を追加することについては概ね意見は一致
→ 新しい改定ルールについては、健康保険法の改定ルールを参考に、上限等級に該当する者が占める割合に着目して上限等級を追加することができるルールが考えられ、本部会での意見を踏まえて、政府において具体的な制度の見直し案について検討が必要
【基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了】
●本部会における議論
→ 部会として意見はまとまらなかった。政府においては、さらに検討を深めるべき