お知らせ

女性活躍推進および職場におけるハラスメント防止対策の強化に関する報告書案が示されました(2024/12/17)

12月16日、第78回労働政策審議会雇用環境・均等分科会が開催され、女性活躍推進および職場におけるハラスメント防止対策の強化に関する報告書案が示されました。

報道によれば、案は了承され、年内にも取りまとめた上で来年の通常国会に関連法案を提出する予定とされています。

案の内容は、第76回(11月26日開催)で示された論点から大きな変更はないため、ここでは、その際に当欄では取り上げなかった、指針等で示すこととされたカスタマーハラスメントの定義および講ずべき措置の具体的な内容等を紹介します。

【カスタマーハラスメントの定義】
以下の3つの要素をいずれも満たすものとし、それぞれについて以下に掲げる事項を指針等で示す

顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと
・ 「顧客」には、今後利用する可能性がある潜在的な顧客も含むと考えられること
・ 「施設利用者」とは、施設を利用する者をいい、施設の具体例としては、駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等が考えられること
・ 「利害関係者」は、顧客、取引先、施設利用者等の例示している者に限らず、様々な者が行為者として想定されることを意図するものであり、法令上の利害関係だけではなく、施設の近隣住民等、事実上の利害関係がある者も含むと考えられること

社会通念上相当な範囲を超えた言動であること
・ 権利の濫用・逸脱に当たるものをいい、社会通念に照らし、当該顧客等の言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、または、手段・態様が相当でないものが考えられること
・ 「社会通念上相当な範囲を超えた言動」の判断については、「言動の内容」および「手段・態様」に着目し、総合的に判断することが適当であり、一方のみでも社会通念上相当な範囲を超える場合もあり得ることに留意が必要であること
・ 事業者または労働者の側の不適切な対応が端緒となっている場合もあることにも留意する必要があること
・ 「社会通念上相当な範囲を超えた言動」の具体例。また、性的な言動等が含まれ得ること

労働者の就業環境が害されること
・ 労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどの、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを意味すること
・ 「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当であること
・ 言動の頻度や継続性は考慮するが、強い身体的または精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、1回でも就業環境を害する場合があり得ること

【上記のほか指針等において示すべき事項】
総論
・ 顧客等からのクレームのすべてがカスタマーハラスメントに該当するわけではなく、客観的にみて、社会通念上相当な範囲で行われたものは、いわば「正当なクレーム」であり、カスタマーハラスメントに当たらないことに留意する必要があること
 ・ カスタマーハラスメント対策を講ずる際、消費者法制により定められている消費者の権利等を阻害しないものでなければならないことや、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)に基づく合理的配慮の提供義務を遵守する必要があることは当然のことであること
・ 各業法等によりサービス提供の義務等が定められている場合等があることに留意する必要があること
・ 事業主が個別の事案についての相談対応等を行うにあたっては、労働者の心身の状況や受け止めなどの認識には個人差があるため、丁寧かつ慎重に対応をすることが必要であること

講ずべき措置の具体的な内容
・ 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
・ 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・ カスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応(カスタマーハラスメントの発生を契機として、カスタマーハラスメントの端緒となった商品やサービス、接客の問題点等が把握された場合には、その問題点等そのものの改善を図ることも含む)
・ これらの措置と併せて講ずべき措置