お知らせ

「労働基準関係法制研究会報告書(案)」が示されました(後半)(2024/12/13)

【労働時間法制の具体的課題】
時間外・休日労働時間の上限規制
 → 自動車運転者や医師などは、一般の上限規制の適用に向けた取組みを引き続き中長期的に検討していく必要がある一方、労働時間の情報開示等により企業による自主的な労働時間短縮を促進する取組みや、休日等の労働からの解放に関する規制については、早期に対応可能な取組みもあるのではないか
 → 柔軟な働き方を可能にする法制度について、労働基準法以外の法令における対応を含めて中長期的に検討していく必要がある

企業による労働時間の情報開示
 → 企業外部に対して、様々な情報開示の取組みが進められ、また、これらの情報を労働者・求職者が一覧性をもって閲覧できるようになることが望ましい
 → 企業内部に対して、
・衛生委員会や労働時間等設定改善委員会等の労使の会議体への情報開示
・過半数代表への情報開示
・管理職にする情報の共有
が考えられる(個人ごとの時間外・休日労働時間は、労働者個人に関する情報であるため、取扱いに関しては配慮が必要)
 → 労働時間を含めた労働条件についての情報が開示されることで、人手確保や離職抑制における企業間の競争が生じ、その競争を通じて労働条件の改善につながることも期待でき、できることから取り組むべき

フレックスタイム制の改善について
 → テレワーク日と通常勤務日が混在するような場合にも活用しやすいよう、テレワークの実態に合わせてフレックスタイム制を見直すことが考えられる
 → テレワークの場合に限らず、特定の日については労働者が自ら始業・終業時刻を選択するのではなく、あらかじめ就業規則等で定められた始業・終業時刻どおり出退勤することを可能とすることにより、部分的にフレックスタイム制を活用できる制度の導入を進めることが考えられる

テレワーク時のみなし労働時間制について
 → 一定の健康確保措置を設けた上で、自宅等でのテレワークに限定したみなし労働時間制を設けることが考えられる。この場合、その導入については集団的合意に加えて個別の本人同意を要件とすること、そして、制度の適用後も本人同意の撤回も認めることを要件とすること等が考えられる
 → 労働者や使用者のニーズ、上記により改善されたフレックスタイム制の下でのテレワークの実情を把握した上で継続的な検討が必要

法定労働時間週44時間の特例措置 
 → 現状のより詳細な実態把握とともに、撤廃に向けた検討に取り組むべき

実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置
 → 管理監督者等に関する健康・福祉確保措置について、検討に取り組むべき
 → 労働基準法以外の法令で規定することも選択肢として内容を検討すべき
 → 管理監督者等の要件を明確化することが必要

休日
 → 「13 日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労働基準法上に設けるべき
 → ただし、災害復旧等の真にやむを得ない事情がある場合の例外措置や、顧客や従業員の安全上やむを得ず必要な場合等に代替措置を設けて例外とする等の対応を労使の合意で可能とする措置についても検討すべき

法定休日の特定
 → あらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上に規定するべき
 → その際、考慮すべき論点としては、
・労働基準法35条で保護すべき法益が「あらかじめ特定した法定休日が確保されること」に変わることによる罰則適用の変化
・ 法定休日の振替えを行う場合の手続きおよび振替えの期間
・ 使用者が法定休日を指定する際の手続き(特にパートタイム労働者やシフト制労働者等への対応。いつまでに休日を特定するか、特定した休日を変更できるか等を含む)
等が考えられ、実態を十分踏まえた上で、これらの論点に対する考え方を明確化していくべき

勤務間インターバル
 → 抜本的な導入促進と義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討する必要がある

つながらない権利
 → 勤務時間外に、どのような連絡までが許容でき、どのようなものは拒否できることとするのか、業務方法や事業展開等を含めた総合的な社内ルールを労使で検討していくことが必要。ガイドラインの策定等を検討することが必要

年次有給休暇制度
 → 使用者の時季指定義務の日数について、直ちに変更すべき必要性があるとは思われない
 → 当該付与期間の残りの労働日が著しく少なくなっている労働者に対してまで、他の労働者と同じ日数の時季指定義務を課すことは、使用者や労働者にとって不合理な制約になる場合があることからも、取扱いを検討することが必要
 → 年次有給休暇取得時の賃金の算定方法は、原則として所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金にしていくべきではないかと考えられる

割増賃金規制
 → 割増賃金の意義や見直しの方向性については割増賃金に係る実態把握を含めた情報収集を進め、中長期的に検討していく必要がある

副業・兼業の場合の割増賃金
 → 労働者の健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金の支払いについては、通算を要しないよう、制度改正に取り組む
 → 現行の労働基準法38条の解釈変更ではなく、法制度の整備が求められる
 → 割増賃金規制を逃れるような行為がなされないように制度設計する必要があり、
・ 健康確保のための労働時間の通算管理を適正に行うための労働時間に関する情報の把握方法や、健康確保のための労働時間を通算した上で長時間労働となっている場合の、本業先と副業・兼業先の使用者の責任関係に関する考え方やとるべき健康確保措置の在り方の整理
・同一の事業者の異なる事業場で働いている場合や、労働者が出向先と出向元で兼務する形態のように、使用者の命令に基づき異なる事業場で働いているような場合においては、引き続き通算することが妥当であること
といった論点の検討についても取り組む必要がある