被用者保険の適用拡大および第3号被保険者制度を念頭に置いたいわゆる「年収の壁」への対応に関する案が示されました(2024/11/18)
11月15日、第20回社会保障審議会年金部会が開催され、被用者保険の適用拡大および第3号被保険者制度を念頭に置いたいわゆる「年収の壁」への対応に関する案が示されました。
【短時間労働者および個人事業所の被用者保険の適用範囲の見直しの方向性案】
●労働時間要件
→ 雇用保険の適用拡大の施行状況等も慎重に見極めながら検討を行う必要がある等の意見があったことから、今回は見直さない
●賃金要件
→ 就業調整の基準として意識されていること、労働時間要件を満たせば本要件を満たす地域や事業所が増加していることを踏まえ、どう考えるか
●学生除外要件
→ 今回は見直さない
●企業規模要件
→ 労働者の勤め先や働き方、企業の雇い方に中立的な制度を構築する観点から、撤廃する。併せて、必要な配慮措置や支援策を講じる
●個人事業所
→ (常時5人以上)解消する。併せて、必要な配慮措置や支援策を講じる
→ (常時5人未満)今回は適用しない
【適用拡大に係る配慮措置・支援策】
●準備期間の確保
→ 十分な準備期間を確保する観点から施行期日を検討する
→ 併せて、施行期日を待たずに適用拡大が可能な事業所については、施行期日までの間、任意包括適用を活用してもらうための支援を行う
●積極的な周知・広報
→ 事業者や労働者に対して積極的に周知・広報を行う
●事務手続に関する支援
→ とりわけ個人事業所は、フルタイムの労働者を含めて初めて被用者保険の事務手続を行う必要があることも踏まえ、きめ細かな支援を行うことを検討する
●経営に関する支援
→ 専門家等による対応を行うとともに、生産性向上や適正な価格転嫁に向けて様々な施策等を通じた支援を行うことを検討する
【複数事業所勤務者に対する被用者保険適用の事務をめぐる課題と見直しの考え方】
●適用の事務をめぐる課題
・複数事業所勤務者は自社の他の被保険者と共通の人事給与システムでは管理できず、個別管理が必要
・他の事業所における報酬月額の変更による保険料の変更等の影響がある
・非選択事業所に通常はやり取りのない選択年金事務所・選択医療保険者とのやり取りが発生し、手続先保険者が増加
●適用の事務をめぐる見直しの考え方
・それぞれの事業所において保険料算定を可能とし、可能な限り事業者における複数事業所勤務者の個別管理をなくす
・管轄年金事務所・医療保険者とのやり取りのみで処理を完結できるようにする
・被保険者が医療保険者を選択できる仕組みを存置することを前提とした場合、通常やり取りがある医療保険者に一本化し、合算した標準報酬の標準報酬月額等級に応じて医療保険者間での保険料調整を行う
●複数事業所での労働時間等の合算
→ 引き続き検討していく
●フリーランス等
→ 中長期的な課題として引き続き検討していく
【第3号被保険者制度を念頭に置いたいわゆる「年収の壁」への対応】
●就業調整に対応した保険料負担割合を変更できる特例の検討の視点
→ 就業調整を行う層に対し、健康保険組合の特例を参考に、被用者保険(厚生年金・健康保険)において、従業員と事業主との合意に基づき、事業主が被保険者の保険料負担を軽減し、事業主負担の割合を増加させることを認める特例を設けることをどのように考えるか
(給付)保険料負担の総額は変わらないため、本特例の適用を受ける者の給付(基礎年金・報酬比例部分)は現行どおり
(保険料負担)本特例を利用した場合、労使の判断で労働者本人の保険料負担を軽減し、被用者保険の適用に伴う手取り収入の減少を軽減できる。ただし、健康保険と同様、事業主が保険料全額を負担し、本人負担をなくすことは認めない
【第3号被保険者制度に係る論点】
●概ね意見が一致している事項
→ まずは被用者保険の適用拡大を進めることにより、第3号被保険者制度の縮小・見直しに向けたステップを踏んでいく
●第3号被保険者制度の検討にあたっての論点
→ これまでの被用者保険の適用拡大、今回のさらなる被用者保険の適用拡大や「年収の壁」への対応によってもなお残る第3号被保険者についての制度の在り方や今後のステップをどのように考えるか
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