貨物軽自動車運送事業者に対し、新たな安全対策が義務付けられます(2024/8/16)
8月14日、国土交通省は自動車事故報告規則等の一部を改正する省令案等に関するパブリックコメント募集を開始しました。
これは、軽自動車による運送需要が拡大している一方、平成28年から令和4年にかけて、保有台数1万台当たりの事業用軽自動車の死亡・重傷事故件数は約5割増加していることを踏まえ、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(令和6年法律第23号。令和6年5月15日公布)において規定された、(1)貨物軽自動車運送事業者が選任する事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を管理する者(以下、「貨物軽自動車安全管理者」という)に必要な知識を習得させる講習機関の登録等、および(2)貨物軽自動車運送事業者に対する新たな安全対策の義務付けに関する規定について、省令に委任された内容等を踏まえ、自動車事故報告規則等を改正するものです。
改正省令は令和6年10月に公布され、上記(1)は令和6年11月に、上記(2)は令和7年4月に施行される予定となっています。
ここでは、上記(2)の具体的な内容を紹介します。
【貨物軽自動車運送事業者に対する新たな安全対策の義務付け】
●自動車事故報告書における報告項目の追加等
→ 飲酒運転事故発生時の報告項目等を追加
●監査対象への貨物軽自動車運送事業者の追加
→ 貨物軽自動車運送事業者のみが除かれていた監査規則の対象として貨物軽自動車運送事業者を加える
●業務記録の保存および特定の運転者への指導監督および適性診断の受診等の義務付け
→ 日々の業務の開始、終了および休憩の日時、業務の開始、終了および休憩の地点、業務に従事した距離および主な経過地点等を記録した業務記録の作成および1年間の保存を義務付けるとともに、特定の運転者(注1)への指導監督及び適性診断の受診を義務付け(注2)
(注1)事故惹起運転者、初任運転者、高齢運転者
(注2)経過措置として、令和7年4月以前に貨物軽自動車運送事業の経営届出または経営変更等届出を行った貨物軽自動車運送事業者については、令和10年4月から適用されます。
●荷待時間・荷役作業等の記録義務の対象となる車両の拡大
→ 現行の「車両総重量が8トン以上又は最大積載量が5トン以上の車両」から、すべての車両に拡大
●事故記録の保存の義務付け
→ 事故が発生した場合、その概要、原因、再発防止対策等の記録および3年間の保存を義務付ける
●貨物軽自動車運転者等台帳の作成の義務付け
→ 運転者の氏名、当該運転者に対する指導および当該運転者の適性診断の受診状況等を記載した貨物軽自動車運転者等台帳を作成し、これを営業所に備え置かなければならないこととする
●貨物軽自動車安全管理者の届出
→ 貨物軽自動車安全管理者を選任したときは、貨物軽自動車運送事業者の氏名または名称、貨物軽自動車安全管理者の氏名および生年月日、貨物軽自動車安全管理者の兼職の有無等を届け出なければならないこととする(注2)
(注2)経過措置として、令和7年4月以前に貨物軽自動車運送事業の経営届出または経営変更等届出を行った貨物軽自動車運送事業者については、令和9年4月から適用されます。
●貨物軽自動車安全管理者定期講習の受講期間
→ 貨物軽自動車安全管理者が運行の安全の確保のために必要な最新の知識を習得するための貨物軽自動車安全管理者定期講習は、2年ごとに受けなければならないものとする
●貨物軽自動車運送事業者の特定の運転者を特別な指導の対象に追加
→ 特定の運転者に対する特別な指導並びにその実施日および実施した内容の保存を求める
●貨物軽自動車運送事業者の事故惹起運転者に対する特別な指導の内容
→ 貨物軽自動車運送事業者の運転者が事故惹起運転者である場合には、交通事故の事例の分析に基づく再発防止対策、危険の予測及び回避に関する事項等について、合計5時間以上指導を受けなければならないこととする
→ 当該事故惹起運転者が貨物軽自動車安全管理者講習を受講した場合には、当該特別な指導を受けたものとみなす
●貨物軽自動車運送事業者の初任運転者に対する特別な指導の内容
→ 貨物軽自動車運送事業者の運転者が新たに運転者として乗務する前3年間に他の貨物自動車運送事業者の運転者として乗務していない場合は、運転者が遵守すべき事項、事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な事項について、合計5時間以上指導を受けなければならないこととする
→ 当該初任運転者が貨物軽自動車安全管理者講習を受講した場合には、当該特別な指導を受けたものとみなす
●貨物軽自動車運送事業者の高齢運転者に対する特別な指導の内容
→ 一般貨物自動車運送事業者等の高齢運転者に対する特別な指導の内容と同様、適性診断の結果を踏まえ、加齢に伴う身体機能の変化の程度に応じた事業用自動車の安全な運転方法等について運転者が自ら考えるように指導することとする
●貨物軽自動車運送事業者の特定の運転者を適性診断の受診の対象に追加
→ 特定の運転者の適性診断の受診並びにその実施日および結果の保存を求める
●新任の運転者に対する過去の事故歴調査
→ 新たに雇い入れた運転者の過去の事故歴の調査を求める
●初任診断および適齢診断実施時の集団カウンセリングの人数
→ 貨物軽自動車運送事業者の特定の運転者に対し、適性診断を受診させることに伴い受診者数の増加が見込まれることを踏まえ、初任診断と適齢診断の実施の効率化を図るため、初任診断および適齢診断を実施する際の集団カウンセリングを12人以下から20人以下とし、業態の区別なく実施できるようにする等の所要の改正を行う
●貨物軽自動車安全管理者の兼務可否
→ 貨物軽自動車安全管理者は他の営業所の貨物軽自動車安全管理者を兼務することはできないこととする
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