在宅勤務手当が割増賃金の基礎となる賃金への算入を要しない場合の取扱いが示されました(2024/4/10)
4月9日、厚生労働省のデータベースに「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」(令和6年4月5日基発0405第6号)が掲載されました。
これは、規制改革実施計画(令和5年6月16日閣議決定)において、「在宅勤務手当のうちどのようなものであれば、合理的・客観的に計算された実費を弁償するもの等として、割増賃金の算定基礎から除外することが可能であるかについて検討し、必要な措置を講ずる」とされたのを受けて発出された通達です。
以下の「実費弁償の考え方」および「実費弁償の計算方法」に照らして、事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される場合には、当該在宅勤務手当については労基法11条の賃金に該当せず、割増賃金の基礎となる賃金への算入は要しない、とされています。
【実費弁償の考え方】
●実費弁償として支給されていると整理されるためには、当該在宅勤務手当は、労働者が実際に負担した費用のうち業務のために使用した金額を特定し、当該金額を精算するものであることが外形上明らかである必要がある
●就業規則等で実費弁償分の計算方法が明示される必要があり、かつ、当該計算方法は在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法である必要がある
●例えば、従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの等は、実費弁償に該当しない
【実費弁償の計算方法】
●「在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法」としては、以下の方法などが考えられる
(1)国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(以下、「国税庁FAQ」という)で示されている計算方法
(2)(1)の一部を簡略化した計算方法
→ 通信費および電気料金については、在宅勤務手当の支給対象となる労働者ごとに、手当の支給月からみて直近の過去複数月(例えば、3カ月程度とすることが考えられる)の各料金の金額及び当該複数月の暦日数並びに在宅勤務をした日数を用いて、業務のために使用した1カ月当たりの各料金の額を(1)の例により計算する
→ この場合は、在宅勤務手当の金額を実費弁償として一定期間継続(最大で1年程度とし、「一定期間」経過後に改めて同様の計算方法で在宅勤務手当の金額を改定することが考えられるが、労働者が実際に負担した費用と乖離が生じないよう適切な時期に改定することが望ましい)して支給することが考えられる。
→ 実費弁償の考え方に照らし、常態として当該在宅勤務手当の額が実費の額を上回っているような場合には、当該上回った額については、賃金として割増賃金の基礎に算入すべきものとなる
(3)実費の一部を補足するものとして支給する額の単価をあらかじめ定める方法
→ 実費の額を上回らない限りにおいて、実費弁償になると考えられるため、実費の額を上回らないよう1日当たりの単価をあらかじめ合理的・客観的に定めたうえで、当該単価に在宅勤務をした日数を乗じた額を在宅勤務手当として支給することは、実費弁償に該当する
→ 「実費の額を上回らないよう1日当たりの単価をあらかじめ合理的・客観的に定め」る方法の例
ア 当該企業の一定数の労働者について、国税庁FAQ問6から問8までの例により、1カ月当たりの「業務のために使用した基本使用料や通信料等」「業務のために使用した基本料金や電気使用料」をそれぞれ計算する。
イ アの計算により得られた額を、当該労働者が当該1カ月間に在宅勤務をした日数で除し、1日当たりの単価を計算する。
ウ 一定数の労働者についてそれぞれ得られた1日当たりの単価のうち、最も額が低いものを、当該企業における在宅勤務手当の1日当たりの単価として定める。
その他、既に割増賃金の基礎に算入している在宅勤務手当(実費弁償に該当するもの)を上記に照らして割増賃金の基礎に算入しないこととする場合、労働条件の不利益変更に当たると考えられるため、法令等で定められた手続き等を遵守し、労使間で事前に十分な話合い等を行うことが必要であることに留意すること、とされています。
≪ 改正マイナンバー法等の施行日を2024年5月27日と定める政令が閣議決定されました | 特定技能の受入れ見込数の再設定および対象分野等の追加が行われています ≫