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民事判決情報のデータベース構築が検討されています(2024/4/8)

3月29日より、法務省「民事判決情報データベース化検討会報告書(素案)」に関するパブリックコメント募集が行われています。

これは、民事訴訟手続のデジタル化を見据え、デジタル社会にふさわしい民事裁判情報の提供の在り方・制度化に向けた諸課題の検討を行ってきた「民事判決情報データベース化検討会」(令和4年10月設置。以下、「検討会」という)による、令和4年改正民事訴訟法(以下、「改正民事訴訟法」という)の規定に基づき作成される電子判決書に係る民事判決情報のデータベース化に関する検討結果をまとめたものです。

次のような構成となっています。

第1 緒言
第2 民事裁判情報を広く国民に提供することの意義
第3 民事裁判情報提供の現状と課題
第4 課題の解決策及びその実現に向けた検討事項
第5 基幹データベースを整備するための制度の在り方
第6 結語

現状、裁判所ウェブサイトにおける民事裁判情報の掲載件数は、年間約20万件言い渡される民事判決のうちの数百件にとどまっており、網羅性があるとはいえず、収集された民事裁判情報には、上訴の有無やその結果、事件類型等、調査分析に資する情報も付加されていないことから、利活用に供するには、さらなる費用と手間をかけて加工する必要もあるなどの課題があります。

そのため、全国の裁判所(簡裁・地裁・高裁・最高裁)から民事裁判情報を取得(あらゆる事案が取得対象となるが、裁判書のうち秘密記載部分は取得しない)した情報管理機関が他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように仮名処理を実施したうえで管理する「基幹データベース」を構築し、機械判読に適したデータで利用者(法律雑誌社や判例データベース会社のような民間事業者のほか、図書館、研究・教育機関、法律実務家、研究者、リーガルテック企業、その他の民間事業者、行政機関等)に有償提供することが検討されています。

この民事裁判情報は、「情報管理機関が全ての訴訟関係者から同意を取得することは非現実的であ」り、「また、民事裁判情報は、司法判断として公にされ、国民に対する行動規範や紛争解決指針を提示するものとして、言わば国民の共有財産というべきものであるから、他の場面における個人情報の利用と保護の調整とは、利益衡量の前提において異なる面がある」として、情報の取得や利用者への提供は、本人の同意を要することなく許容する規律を整備する必要性と相当性がある、とされています。

仮名処理を実施すべき情報としては、次のものが挙げられています。

・個人の氏名の全部(訴訟代理人である弁護士および司法書士、指定代理人、電子裁判書の作成に関与した裁判官ならびに訴訟において国を代表する者の氏名は除く)
・個人の住所のうち市郡(東京都は特別区)より小さい行政区画の情報
・個人の生年月日のうち月日の情報
・個人識別符号(個人情報保護法2条2項)の全部
・電話番号、メールアドレス、クレジットカード番号、預貯金口座番号、土地家屋の所在地のうち市郡(東京都は特別区)より小さい行政区画の情報等

法人の名称や所在地については、「事業の規模を問わず、一律に仮名処理を不要とすべき」とされています。

個人事業主については、プライバシー等を保護する観点からその氏名および住所について仮名処理を実施すべきとされています。

今後は、5月10日までパブリックコメント募集を行ったうえで報告書を取りまとめ、法制化が図られる見通しとなっています。