お知らせ

今後の労働契約法制および労働時間法制の在り方に関する報告書が示されました(後)(2022/12/29)

【労働時間法制】
1 裁量労働制
(1)対象業務
 → 企画型や専門型の現行の対象業務の明確化を行うことが適当
 → 銀行または証券会社において、顧客に対し、合併、買収等に関する考案および助言をする業務について専門型の対象とすることが適当

(2)労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保
対象労働者の要件
 → 専門型対象労働者の属性について、労使で十分協議・決定することが望ましいことを明らかにすることが適当
 → 対象労働者を定めるにあたっての適切な協議を促すため、使用者が当該事業場における労働者の賃金水準を労使協議の当事者に提示することが望ましいことを示すことが適当
 → 対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更しようとする場合に、使用者が労使委員会に変更内容について説明を行うこととすることが適当

本人同意・同意の撤回
 → 専門型について、本人同意を得ることや同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないこととすることが適当
 → 本人同意を得る際に、使用者が労働者に対し制度概要等について説明することが適当であること等を示すことが適当
 → 同意の撤回の手続きを定めることとすることが適当。また、同意を撤回した場合の不利益取扱い禁止を示すことや、撤回後の配置や処遇等についてあらかじめ定めることが望ましいことを示すことが適当

業務量のコントロール等を通じた裁量の確保
 → 裁量労働制は、始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを示すことが適当
 → 労働者から時間配分の決定等に関する裁量が失われた場合には、労働時間のみなしの効果は生じないものであることに留意することを示すことが適当

(3)労働者の健康と処遇の確保
健康・福祉確保措置
 → 健康・福祉確保措置の追加(勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の適用解除)、医師の面接指導)等を行うことが適当
 → 健康・福祉確保措置の内容を「事業場における制度的な措置」と「個々の対象労働者に対する措置」に分類したうえで、それぞれから1つずつ以上を実施することが望ましいことを示すことが適当
 → 「労働時間の状況」の概念およびその把握方法が労働安全衛生法と同一のものであることを示すことが適当

みなし労働時間の設定と処遇の確保
 → みなし労働時間の設定にあたっては対象業務の内容、賃金・評価制度を考慮して適切な水準とする必要があることや対象労働者に適用される賃金・評価制度において相応の処遇を確保する必要があることを示すこと等が適当

(4)労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保
労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上
 → 決議に先立って、使用者が労使委員会に対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容について説明することとすることが適当
 → 労使委員会が制度の実施状況の把握および運用の改善等を行うこととすること等が適当
 → 労使委員会の委員が制度の実施状況に関する情報を十分に把握するため、賃金・評価制度の運用状況の開示を行うことが望ましいことを示すことが適当
 → 労使委員会の開催頻度を6カ月以内ごとに1回とするとともに、労働者側委員の選出手続の適正化を図ることとすること等が適当
 → 専門型についても労使委員会を活用することが望ましいことを明らかにすることが適当

苦情処理措置
→ 本人同意の事前説明時に苦情の申出方法等を対象労働者に伝えることが望ましいことを示すことが適当
→ 労使委員会が苦情の内容を確実に把握できるようにすることや、苦情に至らないような運用上の問題点についても幅広く相談できる体制を整備することが望ましいことを示すことが適当

行政の関与・記録の保存等
 → 企画型の定期報告の頻度を初回は6カ月以内に1回およびその後1年以内ごとに1回とすることが適当
 → 健康・福祉確保措置の実施状況等に関する書類を労働者ごとに作成し、保存することとすることが適当
 → 労使協定および労使委員会決議の本社一括届出を可能とすることが適当

2 年次有給休暇
 → 令和7年までに「年次有給休暇の取得率を70%以上とする」という政府の目標を踏まえ、年次有給休暇の取得率の向上に向け、好事例の収集・普及等の一層の取組を検討することが適当
 → 年5日以内とされている年次有給休暇の時間単位取得について、年5日を超えて取得したいという労働者のニーズに応えるような各企業独自の取組みを促すことが適当

3 今後の労働時間制度についての検討
 → 働き方改革関連法で導入または改正された制度等は、同法の施行5年後に施行状況等を踏まえて検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずることとされていることを踏まえ、今後、施行状況等を把握したうえで検討を加えることが適当
 → その際、働く方の健康確保という原初的使命を念頭に置きながら、経済社会の変化や働き方の多様化等を踏まえ、働き方やキャリアに関する労働者のニーズを把握した上で、労働時間制度の在り方の検証・検討を行うことが適当