今後の労働契約法制および労働時間法制の在り方に関する報告書が示されました(前)(2022/12/28)
12月27日、第187回労働政策審議会労働条件分科会がとりまとめた、今後の労働契約法制および労働時間法制の在り方に関する報告書が示されました。
本日は労働契約法制に関するものを紹介し、29日に労働時間法制に関するものを紹介します。
【労働契約法制】
1 無期転換ルール
●無期転換ルール
→ 制度が適切に活用されるよう必要な取組みをさらに進めることが適当
●無期転換希望者の転換申込機会の確保
→ 無期転換ルールに関する労使の認知状況を踏まえ、無期転換ルールの趣旨や内容、活用事例について、一層の周知徹底に取り組むことが適当
→ 無期転換申込権が発生する契約更新時に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件について、労働基準法の労働条件明示の明示事項に追加することが適当
→ この場合において、労働基準法の労働条件明示において書面で明示することとされているものは、無期転換後の労働条件明示にあたっても書面事項とすることが適当
●無期転換前の雇止め等
→ 無期転換前の雇止めや無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱い等について、法令や裁判例に基づく考え方を整理し、周知するとともに、個別紛争解決制度による助言・指導にも活用していくことが適当
→ 更新上限の有無およびその内容について、労働基準法の労働条件明示事項に追加するとともに、労働基準法14条に基づく告示(注)において、最初の契約締結より後に、更新上限を新たに設ける場合または更新上限を短縮する場合には、その理由を労働者に事前説明するものとすることが適当
(注)「労働基準法第14条第1項第1号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」(平成15年10月22日厚生労働省告示第356号)を指します。
●クーリング期間
→ 法の趣旨に照らして望ましいとは言えない事例等について、一層の周知徹底に取り組むことが適当
●無期転換後の労働条件
→ 有期労働契約時と異なる定めを行う場合を含め、法令や裁判例に基づく考え方、留意点等を整理し、周知に取り組むことが適当
→ 労働契約法3条2項を踏まえた均衡考慮が求められる旨を周知するとともに、無期転換申込権が発生する契約更新時の無期転換後の労働条件等の明示の際に、当該労働条件を決定するにあたって、労働契約法3条2項の趣旨を踏まえて均衡を考慮した事項について、使用者が労働者に対して説明に努めることとすることが適当
→ 正社員への転換をはじめとするキャリアアップの支援に一層取り組むことが適当
●有期雇用特別措置法の活用状況
→ 存在が十分に認知されていない現状があるため、一層の周知徹底に取り組むことが適当
2 労働契約関係の明確化
→ 労働者全般について、労働基準法の労働条件明示事項に就業場所・業務の変更の範囲を追加することが適当
→ 労働者全般について、労働契約の内容の変更のタイミングで、労働契約締結時に書面で明示することとされている事項については、変更の内容をできる限り書面等により明示するよう促していくことが適当
→ 労働基準法の労働条件明示のタイミングに、労働条件の変更時を追加することを引き続き検討することが適当
→ 多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する裁判例等を幅広く整理して明らかにし、周知徹底に取り組むことが適当
→ 就業規則を備え付けている場所等を労働者に示すこと等、就業規則を必要なときに容易に確認できるようにする必要があることを明らかにすることが適当。また、就業規則の更なる周知の在り方について、引き続き検討することが適当
→ 短時間正社員については、処遇について、正社員としての実態を伴っていない場合には、パート・有期労働法の適用があり均衡・均等待遇が求められることや、同法が適用されないそれ以外の多様な正社員においても、労働契約法3条2項による配慮が求められることを周知することが適当
3 労使コミュニケーション
→ 留意点や、適切に労使コミュニケーションを図りながら無期転換や多様な正社員等について制度の設計や運用を行った各企業の取組事例を把握して周知することが適当
→ 過半数代表者の適正な運用の確保や多様な労働者全体の意見を反映した労使コミュニケーションのさらなる促進を図る方策について引き続き検討を行うことが適当
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