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医療保険制度改革に向けた議論の整理(案) が示されました(2022/12/16)

12月15日、第161回社会保障審議会医療保険部会が開催され、医療保険制度改革に向けた議論の整理(案) が示されました。

同部会では、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(令和4年6月7日閣議決定)、「新経済・財政再生計画改革工程表2021」(令和3年12月23日経済財政諮問会議決定)において検討が求められていた次の項目等を中心に、検討が行われました。

子育て世帯への支援の強化
高齢者医療を負担能力に応じてすべての世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し
被用者保険者間における負担能力に応じて公平に負担する仕組みの強化
医療費適正化計画の実効性の確保


案では、上記の項目に関して次のように示されています。

【子育て世帯への支援の強化】
出産育児一時金の引き上げ額
令和5年4月から全国一律で50万円に引き上げる一方で、引上げ後3年を目途に出産育児一時金の在り方について検討するべき

出産費用の見える化
・医療機関等ごとの出産費用の状況のみならず、その医療機関等の特色やサービスの内容なども併せて公表し、被保険者等である妊婦が適切に医療機関等を選択できるようにすることが適切
・直接支払制度を行っている医療機関等については、次の①~③に関して報告を求め、④と併せてHPで医療機関等ごとに公表すべき(注)
① その医療機関等の特色(機能や運営体制等)
② 室料差額や無痛分娩の取扱い等のサービス内容
③ その医療機関等における分娩に要する費用および室料差額、無痛分娩等の内容(価格等)の公表方法
④ 直接支払制度の専用請求書の内容に基づき算出した平均入院日数や出産費用、妊婦合計負担額等の平均値に係る情報
 (注)④については分娩数が少ない医療機関等は公表を任意とし、①~④の公表項目等の詳細は令和5年夏までに検討を行い、令和6年4月を目途に実施すべきとされています。

出産育児一時金を全世代で支え合う仕組みの導入
・後期高齢者医療制度から出産育児一時金に係る費用の一部を支援する仕組みの導入
 → 対象範囲は出産育児一時金の対象額の7%とし、以後7%を起点として、出産育児一時金に関する現役世代と後期高齢者の1人当たり負担額の伸び率が揃うよう割合を設定する。また、後期高齢者医療制度内の費用分担に関しては、後期高齢者医療広域連合それぞれの被保険者数により按分する。
 → 後期高齢者医療制度からの支援金の導入については、令和6年度から施行(激変緩和措置として、令和6年度および7年度は出産育児一時金の全体(公費を除く)の2分の1とし、令和8年度からは出産育児一時金の全体とする)
・国民健康保険における産前産後の保険料負担軽減措置の創設
 → 出産する被保険者に係る産前産後期間相当分(4カ月間)の均等割保険料および所得割保険料を免除する

【高齢者医療を負担能力に応じてすべての世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し】
高齢者負担率の見直し
 当面の現役世代の負担上昇を抑制するため、後期高齢者1人当たり保険料と現役世代1人当たり後期高齢者支援金の伸び率が同じになるよう、令和6年度から高齢者負担率の設定方法を見直す

高齢者の保険料負担のあり方の見直し
・ 賦課限度額の引上げに伴う保険料の急増に配慮し、施行後1年内に新たに75歳に到達する方を除き、賦課限度額を2年かけて段階的に引き上げる(令和6年度73万円、令和7年度80万円)
・ 所得割のある一定所得以下の方への激変緩和措置として、年金収入211万円相当の方まで(約240万人)を対象に、保険料を2年かけて段階的に引き上げる(制度改正分は令和7年度)
・「現役並み所得」の判断基準の見直しについては、引き続き検討することが適当
 
【被用者保険者間における負担能力に応じて公平に負担する仕組みの強化】
前期高齢者の医療給付費負担における被用者保険者間の格差の是正
・前期高齢者の給付費の調整として、負担能力に応じた負担の観点から、被用者保険者間では、現行の「加入者数に応じた調整」に加え、部分的に「報酬水準に応じた調整」(報酬調整)を導入する
・前期高齢者納付金の計算において複数年(3年)平均給付費を用いることとする
・報酬水準の導入はあくまでも部分的なものとし、その範囲は3分の1に止めるべき

現役世代の負担上昇の抑制・賃上げ促進のための健保組合等への支援
・報酬調整を導入することに伴い、被用者保険者内でも相対的に財政力のある健保組合等は納付金負担が増加することから、負担軽減を図るとともに、負担上昇がトータルとして抑制されるよう、健保組合等を対象として実施されている既存の支援を見直すとともに、さらなる支援を行う
・具体的には、次の支援策を行うべきとされています。
 ・高齢者医療運営円滑化等補助金について、賃上げ等により一定以上報酬水準が引き上がった健康保険組合に対する補助を創設するなど、拠出金負担のさらなる軽減を行い、
 ・ 健保組合の自主的な支え合いである交付金交付事業を強化する観点から、健康保険組合連合会が実施する健保組合に対する高額医療交付金事業について、財政的支援の制度化を行うことで事業規模を拡充し、
 ・ 拠出金負担が義務的支出に比して過大で財政力の弱い保険者の負担を軽減する特別負担調整への国費充当を拡大し、負担軽減対象となる保険者の範囲を拡大するべき

【医療費適正化計画の実効性の確保】
「経済財政運営と改革の基本方針 2021」に基づく対応を行うとともに、部会で出された意見を踏まえた11の措置を講じるべき

また、案では国民健康保険制度改革の推進についても、同部会で出た意見を踏まえ、国と地方、その他の関係者等による議論・検討を深めるべきとされています。