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テレワークガイドライン改定案の詳細について(2)(2021/3/11)

3月4日、第38回労働政策審議会雇用環境・均等分科会の資料にて示されたテレワークガイドライン改定案(以下、「案」という)は、平成30年2月版から全面的に刷新された内容となっています。

案のうち、今号では次の項目を見ていきます。

 様々な労働時間制度の活用周知
 テレワークにおける労働時間管理の工夫

【6 様々な労働時間制度の活用周知】

労働時間制に応じて、次のような運用が挙げられています。

通常の労働時間制度及び変形労働時間制
・テレワークでオフィスに集まらない労働者について必ずしも一律の時間に労働する必要がないときには、その日の所定労働時間はそのままとしつつ、始業・終業時刻についてテレワークを行う労働者ごとに自由度を認めることも考えられる。
・このような場合には、使用者があらかじめ就業規則に定めておくことによって、テレワークを行う際に労働者が始業・終業時刻を変更できるようにすることが可能。

フレックスタイム制
・ 在宅勤務の場合に、労働者の生活サイクルに合わせて、始業・終業時刻を柔軟に調整することや、オフィス勤務の日は労働時間を長く、在宅勤務の日は労働時間を短くして家庭生活に充てる時間を増やすといった運用が可能。
・ 中抜け時間についても、労働者自らの判断により、その時間分その日の終業時刻を遅くしたり、清算期間の範囲内で他の労働日において労働時間を調整したりすることが可能。
・ テレワーク実施日にはコアタイムを設けず、オフィス出勤日・時間にはコアタイムを設けておくなど、企業の実情に応じた柔軟な取扱いも可能。

事業場外みなし労働時間制
テレワークにおいて、次の(1)(2)をいずれも満たす場合には、制度を適用することができるとされています。

(1)情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
以下の場合については、いずれも(1)を満たすと認められ、情報通信機器を労働者が所持していることのみをもって、制度が適用されないことはない。
・ 勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合
・ 勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合
・ 会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、または折返しのタイミングについて労働者において判断できる場合

(2)随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
以下の場合については(2)を満たすと認められる。
・ 使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、1日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合

【7 テレワークにおける労働時間管理の工夫】
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日基発0120第3号。以下、「適正把握ガイドライン」という)も踏まえた使用者の対応として、次の対応が示されています。

客観的な記録による把握
情報通信機器やサテライトオフィスを使用しており、その記録が労働者の始業・終業時刻を反映している場合には、次の対応が考えられる。
(1)労働者がテレワークに使用する情報通信機器の使用時間の記録等により、労働時間を把握すること
(2)使用者が労働者の入退場の記録を把握できるサテライトオフィスにおいて行う場合には、サテライトオフィスへの入退場の記録等により労働時間を把握すること

労働者の自己申告による把握
情報通信機器を使用していたとしても、その使用時間の記録が労働者の始業・終業時刻を反映できないような場合に、労働者の自己申告により労働時間を把握することが考えられるが、その場合、使用者は、次の措置を講ずる必要がある。

(1)労働者に対して労働時間の実態を記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うことや、実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用等について十分な説明を行うこと
(2)労働者からの自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、パソコンの使用状況など客観的な事実と、自己申告された始業・終業時刻との間に著しい乖離があることを把握した場合(注)には、所要の労働時間の補正をすること
(3)自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設けるなど、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと  など
 (注)例:申告された時間以外の時間にメールが送信されている、申告された始業・終業時刻の外で長時間パソコンが起動していた記録がある等の事実がある場合。なお、申告された労働時間が実際の労働時間と異なることをこのような事実により使用者が認識していない場合には、当該申告された労働時間に基づき時間外労働時間の上限規制を遵守し、かつ、同労働時間を基に賃金の支払等を行っていれば足りる。

労働者の自己申告により労働時間を簡便に把握する方法としては、例えば1日の終業時に、始業・終業時刻をメール等にて報告させるといった方法を用いることが考えられる。

労働時間制度ごとの留意点
(1)フレックスタイム制
 → 使用者は労働者の労働時間については、適切に把握すること

(2)事業場外みなし労働時間制
 → 必要に応じて、実態に合ったみなし時間となっているか労使で確認し、使用者はその結果に応じて業務量等を見直すこと

(3)裁量労働制
 → 必要に応じて、業務量が過大または期限の設定が不適切で労働者から時間配分の決定に関する裁量が事実上失われていないか、みなし時間と当該業務の遂行に必要とされる時間とに乖離がないか等について労使で確認し、使用者はその結果に応じて業務量等を見直すこと

テレワークに特有の事象の取扱い
(1)中抜け時間
中抜け時間については、労基法上、使用者は把握しても、把握せずに始業・終業時刻のみ把握することとしても、いずれでもよい。取扱いについては、あらかじめ使用者が就業規則等において定めておくことが重要である。
中抜け時間を把握する場合、方法として、例えば1日の終業時に、労働者から報告させることが考えられる。
また、テレワーク中の中抜け時間の取扱いとしては、次のようなことが考えられる。
・把握する場合
 → 休憩時間として取り扱い、終業時刻を繰り下げたり、時間単位の年次有給休暇として取り扱う
・把握しない場合
 → 始業・終業時刻の間の時間について、休憩時間を除き労働時間として取り扱うこと  など

(2)勤務時間の一部についてテレワークを行う際の移動時間
・労働者による自由利用が保障されている時間
 → 休憩時間として取り扱うことが考えられる。
・使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じ、その間の自由利用が保障されていない場合(例:テレワーク中の労働者に対して、使用者が具体的な業務のために急きょオフィスへの出勤を求めた場合など)
 → 労働時間に該当する。

(3)休憩時間の取扱い
テレワークを行う労働者について、労使協定により、一斉付与の原則を適用除外とすることが可能。

(4)時間外・休日労働の労働時間管理
テレワークの場合においても、三六協定の締結、届出や割増賃金の支払い、また深夜労働に係る割増賃金の支払いも必要。このため、使用者は、労働者の労働時間の状況を適切に把握し、必要に応じて労働時間や業務内容等について見直すことが望ましい。

(5)長時間労働対策
テレワークにおける長時間労働等を防ぐ手法として、次のような手法が示されています。
・時間外等のメール送付の抑制等
・所定外深夜・休日のシステムへのアクセス制限
・時間外・休日・所定外深夜労働についての手続きの見直し(例:労使の合意により、時間外等の労働が可能な時間帯や時間数をあらかじめ使用者が設定し、時間外等の労働を行う場合の手続き等を就業規則に明記し、対象労働者に書面等で明示する)
・長時間労働が生じるおそれのある労働者や、休日・所定外深夜労働が生じた労働者に対する注意喚起
・勤務間インターバル制度の利用