治療と仕事の両立支援「指針案とガイドラインの対照表」が示されました(2025/9/30)
9月26日、第2回治療と仕事の両立支援指針作成検討会が開催され、治療と仕事の両立支援についての「指針案とガイドラインの対照表」が示されました。
職場における治療と仕事の両立支援については、平成 28 年2月にガイドラインを公表し、事業主の取組を推進してきたところですが、令和7年6月に公布された労働施策総合推進法の改正法(施行日は令和8年4月1日)により、事業主に対して、治療と仕事の両立支援のための必要な措置を講じる努力義務を課すとともに、当該措置の適切・有効な実施を図るため必要な指針(治療と仕事の両立支援指針)を定めることとされました。上記検討会では、このガイドラインから指針への「格上げ」の内容についての検討を行っています。
ここでは、追記部分や見直しがなされている箇所のなかから主なものをピックアップして紹介します(下線部分が追記、太字部分が見直し)。
●労働安全衛生法との関係
(指針案)
また、同法第68条及び労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第61条第1項では、事業主は、「心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかつた者」等については、その就業を禁止しなければならないとしており、同条第2項において、「前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見を聞かなければならない」としているところ、この規定は、その労働者の疾病の種類、程度及びこれについての産業医等の意見を勘案の上、可能な限り配置転換、作業時間の短縮その他の必要な措置を講ずることによって就業の機会を失わせないようにし、やむを得ない場合に限り就業を禁止するものとする趣旨であり、種々の条件を十分に考慮して慎重に判断すべきものである。
(現行ガイドライン)
また、同法及び労働安全衛生規則では、事業者は、「心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかった者」については、その就業を禁止しなければならないとされているが、この規定は、その労働者の疾病の種類、程度、これについての産業医等の意見を勘案してできるだけ配置転換、作業時間の短縮その他の必要な措置を講ずることによって就業の機会を失わせないようにし、やむを得ない場合に限り禁止する趣旨であり、種々の条件を十分に考慮して慎重に判断すべきものである。
●措置等の検討と実施
(指針案)
治療と就業の両立支援を申し出た労働者への対応の検討に当たり、労働者に対する措置等を事業主が一方的に判断してしまわないよう、以下の取組が必要である。
・就業継続の希望や配慮の要望を聴取し、十分な話し合い等を通じて本人の了解を得られるよう努めること
・疾病の罹患をもって安易に就業を禁止せず、主治医や産業医等の意見を勘案し、可能な限り配置転換、作業時間の短縮その他の必要な措置を講じて就業の機会を失わせないよう留意すること
・疾病及びその治療に対する誤解や偏見等が生じないよう、事業主、人事労務担当者、上司・同僚等の各関係者において必要な配慮を行うこと
(現行ガイドライン)
産業医等の意見を踏まえた検討事業者は、主治医や産業医等の意見を勘案し、就業を継続させるか否か、具体的な就業上の措置や治療に対する配慮の内容及び実施時期などについて検討を行う。その際、就業継続に関する希望の有無や、就業上の措置及び治療に対する配慮に関する要望について、労働者本人から聴取し、十分な話合いを通じて本人の了解が得られるよう努めることが必要である。
なお、検討に当たっては、疾病に罹患していることをもって安易に就業を禁止するのではなく、主治医や産業医等の意見を勘案してできるだけ配置転換、作業時間の短縮その他の必要な措置を講ずることによって就業の機会を失わせないようにすることに留意が必要である。
●両立支援の進め方①
(指針案)
(1)両立支援を必要とする労働者が、支援に必要な情報を収集して事業主に提出(必要に応じて厚生労働省労働基準局長が定める様式例を活用)
(中略)
両立支援を必要とする労働者から事業主に相談があった場合は、労働者が必要十分な情報を収集できるよう、産業医等の産業保健スタッフや人事労務担当者は、事業主が定める勤務情報の提供のための書面の作成支援や、両立支援に関する手続きの説明を行うなど、必要な支援を行うことが望ましい。また、主治医の意見を求める際には、機微な健康情報を取り扱うこととなることから、産業医等がいる場合には産業医等を通じて情報のやり取りを行うことが望ましい。
(以下省略)
(現行ガイドライン)
両立支援を必要とする労働者から、事業場の産業保健スタッフや人事労務担当者に相談があった場合は、労働者が必要十分な情報を収集できるよう、産業保健スタッフや人事労務担当者は、事業者が定める勤務情報の提供のための書面の作成支援や、両立支援に関する手続きの説明を行うなど、必要な支援を行うことが望ましい。
(以下省略)
●両立支援の進め方②
(指針案)
(3)事業主が、主治医及び産業医等の意見を勘案し、就業継続の可否を判断
(中略)
なお、検討に当たっては、疾病に罹患していることをもって安易に就業を禁止するのではなく、主治医や産業医等の意見を勘案して可能な限り配置転換、作業時間の短縮その他の必要な措置を講ずることによって就業の機会を失わせないようにすることに留意が必要である。
(現行ガイドライン)
(中略)
なお、検討に当たっては、疾病に罹患していることをもって安易に就業を禁止するのではなく、主治医や産業医等の意見を勘案してできるだけ配置転換、作業時間の短縮その他の必要な措置を講ずることによって就業の機会を失わせないようにすることに留意が必要である。
●両立支援の進め方③
(指針案)
(6)治療後の経過が悪い場合の対応
労働者の中には、治療後の経過が悪く、病状の悪化により、業務遂行が困難になり、治療と就業の両立が困難になる場合もある。
その場合は、事業主は、労働者の意向も考慮しつつ、主治医や産業医等の医師の意見を求め、治療や症状の経過に沿って、就業継続の可否について慎重に判断する必要がある。
事業主は、労働のため病勢が著しく増悪するおそれがある場合には、あらかじめ産業医その他専門の医師の意見をきいた上で、労働安全衛生法第68条に基づき、就業禁止の措置を取る必要がある。
(現行ガイドライン)
労働者の中には、治療後の経過が悪く、病状の悪化により、業務遂行が困難になり、治療と仕事の両立が困難になる場合もある。
その場合は、労働者の意向も考慮しつつ、主治医や産業医等の医師の意見を求め、治療や症状の経過に沿って、就業継続の可否について慎重に判断する必要がある。
主治医や産業医等の医師が、労働のため病勢が著しく増悪するおそれがあるとして就業継続は困難であると判断した場合には、事業者は、労働安全衛生法第68条に基づき、就業禁止の措置を取る必要がある。
●両立支援の進め方④
(指針案)
(7)業務遂行に影響を及ぼしうる状態の継続が判明した場合への対応
労働者に、治療後に、業務遂行に影響を及ぼしうる状態が継続することが判明した場合には、作業転換等の就業上の措置について主治医や産業医等の医師の意見を求め、その意見を勘案し、十分な話合いを通じて労働者本人の了解が得られるよう努めた上で、就業上の措置を実施する。
期間の限定なく就業上の措置の継続が必要になる場合もあり、その際には、人事労務担当者や上司、同僚等の理解・協力が重要である。
また、就業上の措置状況について、定期的かつ着実な確認などのフォローが重要である。
(現行ガイドライン)
労働者に障害が残ることが判明した場合には、作業転換等の就業上の措置について主治医や産業医等の医師の意見を求め、その意見を勘案し、十分な話合いを通じて労働者本人の了解が得られるよう努めた上で、就業上の措置を実施する。
期間の限定なく就業上の措置の継続が必要になる場合もあり、その際には、人事労務担当者や所属長・上司、同僚等の理解・協力が重要である。
また、就業上の措置状況について、定期的かつ着実な確認などのフォローが重要である。
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