お知らせ

会計検査院より建設業労災保険料の徴収漏れ等に関する是正処置が求められています(2025/9/29)

9月22日、会計検査院は、一括有期事業等に係る保険料が労働保険徴収法等に基づいて適切に申告され、徴収されているかなどに着眼して実施した検査結果を踏まえ、「一括有期事業等を行う事業主に係る労働者災害補償保険の保険料の徴収及び算定基礎調査の実施について」を公表し、是正改善の処置を求め意見を表示しました。

検査方法
・令和4年度の一括有期事業に係る確定保険料のデータと保険給付のデータとを突合するなどして、一括有期事業等に係る確定保険料の申告が適切に行われていないおそれがある全47労働局管内の1,050事業主を選定
・令和4、5両年度の一括有期事業等に係る確定保険料の徴収の適否について、本省および17労働局の事業主から提出された確定保険料申告書、一括有期事業報告書等の書類により会計実地検査を行うとともに、当該17労働局を含む全47労働局に算定基礎調査を実施するよう求めた上で、その結果の提出を受け、内容を確認するなどの方法により実施

検査結果
(1)一括有期事業に係る確定保険料の徴収不足
1,050事業主のうち、47労働局管内の480事業主において、概算保険料を納付した年度内に終了した一括有期事業に該当する元請工事の全部または一部を一括有期事業報告書に記載しておらず、これらの元請工事の請負金額を含めることなく賃金総額を算定するなどして、この額に基づき確定保険料を算定して申告しており、徴収額が計4,153万余円不足(すべて徴収決定等の処置済み)

(2)一括有期事業に係る保険料の算定等に関する周知の不徹底
厚生労働省では、事業主に対するリーフレットの送付、ウェブサイトへの掲載等により周知を行っていたが、上記480事業主においては、元請事業主として元請工事を申告する必要性や、すべての元請工事を一括有期事業報告書に記載する必要があることについての理解が十分でないなどしていた

(3)継続事業に係る確定保険料の徴収不足
1,050事業主のうち、44労働局管内の382事業主において、工事現場等で行われる建設の事業および事務所等作業の両方に従事する労働者がいるにもかかわらず、継続事業の保険関係の成立の届出を行っていなかったこと、また、継続事業の保険関係の成立の届出は行っていたものの、事務所等作業に従事する労働者の賃金総額を確定保険料算定の基礎となる賃金総額に計上していなかったことなどにより、確定保険料を適切に申告しておらず、徴収額が計1,618万余円不足(382事業主に係る徴収不足額1,618万余円のうち261事業主に係る1,517万余円については徴収決定等の処置済み。121事業主に係る101万余円については、労働局の誤った取扱いの周知等に原因があるとして事業主の理解が得られていないため、令和7年8月末時点において未処置)

(4)継続事業に係る保険料の算定等に関する誤った取扱いの周知
・厚生労働省では、工事現場等で行われる建設の事業および事務所等作業の両方に従事する労働者がいる場合には、継続事業の保険関係の成立の届出が必要であるという取扱いを労働局に明確に示していなかったため、全47労働局のうち40労働局において、継続事業の保険関係の成立の届出を行っておらず一括有期事業の保険関係の成立の届出のみを行っている事業主に対して、工事現場等で行われる建設の事業および事務所等作業の両方に従事する労働者がいる場合であっても、一括有期事業の労働保険番号を用いて保険給付を受けるよう誤った周知等をしていた

・厚生労働省では、事務所等作業に従事する労働者がいる場合には、当該労働者の賃金総額を継続事業に係る保険料の算定の基礎となる賃金総額に計上するよう労働局に指示していたが、一部の労働局においては理解が十分でなく、事務所等作業に従事する労働者がいる場合であっても、当該労働者の賃金総額を継続事業に係る確定保険料の算定の基礎となる賃金総額に計上しなくてもよいなどの誤った周知等をしていた

(5)算定基礎調査の対象となる事業主の選定方法に改善の要あり
各労働局は、マニュアル等に定められている選定基準に基づき、申告された保険料に疑義があるなどした事業主を選定していたが、厚生労働省では選定にあたり、確定保険料のデータと保険給付のデータとを突合するなどの方法を検討し、マニュアル等で示すなどすることまではしておらず、徴収不足が見受けられた807事業主は、令和4年度の調査対象になっていなかったことから、事業主を選定するにあたっては、確定保険料のデータと保険給付のデータとを突合することなども有用であると認められる

求める是正改善の処置および表示する意見
(1)一括有期事業に係る保険料の算定等に関する周知の徹底
事業主に対して、一括有期事業に係る保険料について、元請事業主として元請工事の申告を行う必要があること、また、賃金総額を算定する際には、概算保険料を納付した年度内に終了した元請工事を全て一括有期事業報告書に記載する必要があることなどの留意事項を周知徹底すること

(2)労働局に対する指示および指導と事業主に対する周知徹底
労働局に対して、工事現場等で行われる建設の事業と事務所等作業の両方に従事する労働者がいる場合を含めて、事務所等作業に従事している労働者がいる場合は、継続事業の保険関係の成立の届出を行い、事務所等作業に従事する労働者の賃金総額を算定して、保険料を適切に申告する必要があることなどについて指示及び指導を行うとともに、事業主に対しても周知徹底すること

(3)算定基礎調査の対象事業主の選定方法に関する検討
算定基礎調査の対象とする事業主の選定方法として、確定保険料のデータと保険給付のデータとを突合するなどの方法を検討し、マニュアル等で示すなどの算定基礎調査を着実に実施するための体制整備を図ること