厚生年金の適用拡大と遺族年金制度の見直しに関する案が大筋で了承されました(2024/12/11)
12月10日、第23回社会保障審議会年金部会が開催され、厚生年金の適用拡大と遺族年金制度の見直しに関する案が大筋で了承されました。
【被用者保険の適用拡大】
●賃金要件の撤廃
→ 本要件を撤廃する
●撤廃の時期の配慮
→ 賃金要件の撤廃によって保険料負担が相対的に過大とならないよう、最低賃金の動向を踏まえつつ、本要件撤廃の時期に配慮
●最低賃金の減額特例の対象となる労働者への配慮
→ 最低賃金の減額特例の対象となる賃金が月額8.8万円未満の短時間労働者については、希望する場合に、事業主に申し出ることで任意に被用者保険に加入できる仕組みとする
【いわゆる「年収の壁」への対応】
●保険料負担割合を任意で変更できる特例(案)
→ 任意で従業員と事業主との合意に基づき、事業主が被保険者の保険料負担を軽減し、事業主負担の割合を増加させることを認める特例を設ける
→ 労使折半の原則との関係で例外的な位置付けであること等を踏まえて、時限措置とする
→ 適用範囲は、最低賃金の近傍で就労し、被用者保険の適用に伴う「年収の壁」を意識する可能性のある短時間労働者に限定することを念頭に検討(最大12.6万円の標準報酬月額を想定)
→ 特例の適用を受ける被保険者の負担割合について、
・ 同一の等級に属する者同士で揃えることとしつつ、
・ 等級ごとの具体的な割合は、事業所単位で労使合意に基づき任意に設定可能
とする
→ 特例を利用する事業所において、厚生年金保険料と健康保険料のうちどちらか一方にだけ本特例を適用することや、両方ともに本特例を適用しつつ、負担割合を別々に設定することを可能とする
→ 賞与についても本特例の対象とすることを可能とする
【遺族年金制度等の見直し】
●20代から50代に死別した子のない配偶者に対する遺族厚生年金を、生活状況の激変から再建することを目的とする5年間の有期給付と位置付け、年齢要件に係る男女差を解消(足下の見直し対象は40歳未満とし、20年かけて60歳未満に引上げ)
●配慮措置として死亡者との婚姻期間中の厚年期間に係る標準報酬等を分割(死亡分割)する仕組みの創設により、分割を受けた者の将来の老齢厚生年金額を増加
●配慮措置として生計維持要件のうち収入要件を廃止
●配慮措置として下記は現行制度の給付内容を維持
・18歳未満の子のある世帯としてみた場合における子を養育する間の遺族給付の内容
・60歳以降の高齢期に配偶者を亡くした者に対する遺族厚生年金
・改正法の施行日前に受給権が発生している遺族厚生年金
●様々な事情によって十分な生活の再建に至っていない者に対しては5年間の有期給付終了後も所得等に応じた遺族厚生年金の支給を継続
●18歳未満の子のある配偶者に対する遺族厚生年金については、子が18歳到達年度末を迎えて遺族基礎年金失権後から5年間の有期給付とする(ただし、配偶者の収入が850万円以上である場合の取扱いについては他のケースとの整合性に留意しつつ検討中)
●寡婦年金の取扱いについては、将来的な廃止を含めて引き続き検討事項とする。また、死亡一時金の取扱いについても寡婦年金の取扱いと合わせて、引き続きの検討事項とする
≪ 「労働基準関係法制研究会報告書(案)」が示されました(前半) | 高額療養費の自己負担引上げと保険料負担の軽減に関する試算が示されました ≫