「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」報告書が公表されています(2024/1/26)
1月19日、公正取引委員会は、フリーランス新法の施行に向けて政令または公正取引委員会規則で定めることとされている事項に関する検討結果をまとめた「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」報告書を公表しました。
主な内容を紹介します。
●業務委託をした場合に明示しなければならない事項
① 業務委託事業者および特定受託事業者の商号、名称等
→ トラブルが発生した場合への備えとして実際の氏名等を把握しておくことが考えられる旨をガイドライン等で明らかにする
② 業務委託をした日
③ 特定受託事業者の給付・役務を受領する期日
④ 特定受託事業者の給付を受領する場所
⑤ 給付・役務の内容を検査をする場合は、検査完了期日
⑥ 報酬をデジタル払い(報酬の資金移動業者の口座への支払い)をする場合に必要な事項
⑦ 報酬の額
⑧ 報酬の支払期日
⑨ 報酬の全部または一部の支払いにつき、手形を交付する場合に必要な事項
⑩ 報酬の全部または一部の支払いにつき、一括決済方式で支払う場合に必要な事項
⑪ 報酬の全部または一部の支払いにつき、電子記録債権で支払う場合に必要な事項
⑫ 報酬の全部または一部の支払いにつき、デジタル払い(報酬の資金移動業者の口座への支払い)をする場合に必要な事項
⑬ 具体的な金額を記載することが困難なやむを得ない事情がある場合の、報酬の具体的な金額を定めることとなる算定方法
⑭ 業務委託をしたときに書面または電磁的方法により明示しない事項(以下、「未定事項」という)がある場合の、未定事項の内容が定められない理由および特定事項の内容を定めることとなる予定期日
⑮ 基本契約等の共通事項があらかじめ明示された場合の個別契約との関連付けの明示
⑯ 未定事項の内容を書面または電磁的方法により明示する場合の、当初明示した事項との関連性を確認できる記載事項
●上記以外の検討事項に関する取扱い
・知的財産権の帰属
→ ?業務委託事業者が、作成の目的たる使用の範囲を超えて、当該知的財産権を自らに譲渡・許諾させることを含んで発注する場合には、業務委託事業者は、明示事項とする「特定受託事業者の給付の内容」の一部として、特定受託事業者が作成した情報成果物等に係る知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明確に記載する必要がある旨をガイドライン等で明確にするとともに、?当該知的財産権を無償で譲渡・許諾させられる場合や、当該情報成果物の二次利用について特定受託事業者が知的財産権を有するにもかかわらず収益が配分されない場合等における考え方をガイドライン等で明らかにする
・納品・検収方法(納品・検収基準)
→ 業務委託事業者が「給付の内容」を明示する際には、特定受託事業者が作成・提供する委託の内容がわかるよう、具体的に記載する必要があるとの考え方をガイドライン等で示す
・交通費、宿泊費、材料費等の諸経費
→ ?例えば、業務委託をした際に、諸経費を「報酬の額」として支払うこととしている場合には、当該諸経費を含めた「報酬の額」を明示する必要があるといった考え方をガイドライン等で明らかにするとともに、?業務委託事業者と特定受託事業者の間で取り決めることなく、特定受託事業者が業務委託事業者に支払うべきものとして何らかの金額を報酬の額から差し引いて支払う場合には、減額として問題となり得るため、あらかじめ当該金額の取扱いについて取り決めておくことが望ましいなど、法5条に定める遵守事項に関する考え方をガイドライン等で明らかにする
・いわゆる罰金を含めた違約金等
→ 不当な違約金等の額を差し引いた報酬の額を支払う場合には減額として問題となるなど、法5条に定める遵守事項に関する考え方をガイドライン等で明らかにする
・中途解除の際の費用や、やり直しが生じ得る場合の条件・範囲
→ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定業務委託事業者が特定受託事業者に対して、費用を負担せずに発注を取り消し、またはやり直しをさせる場合には、不当な給付内容の変更および不当なやり直しとして問題となるなど、法5条に定める遵守事項に関する考え方をガイドライン等で明らかにする
●法5条の規定の対象となる業務委託の期間
→ 1カ月とすることが妥当
→ 契約の更新により当該期間以上継続して行うこととなる場合の「空白期間」は、一定の空白期間が存在する場合であっても契約の更新とすることおよび当該空白期間は固定した日数とするなどわかりやすいものとすることが考えられる
→ 契約の更新により当該期間以上継続して行うこととなる場合「契約の同一性」は、公正取引委員会においては、契約の同一性に関する判断基準をガイドライン等で明確化する
→ 基本契約に基づく個別契約が行われた場合については、当該基本契約が締結された日および当該基本契約が終了する日をそれぞれ法5条の規定の対象となる業務委託の期間の「始期」および「終期」とすることが適当
→ 個別契約または基本契約の「終期」に期間の定めがない場合は、本検討会における議論を踏まえ、当該業務委託は法5条の規定の対象とすることが適当
●電磁的方法
→ 明示事項を電磁的方法で明示する場合の電磁的方法の種類は、メール(クラウドメールサービス含む)のほか、オンラインストレージサービス、SNS等電磁的方法を広く認めることが適切
→ 送信データを事後的に削除できる媒体を使用する際の留意点(明示事項が示された際のメッセージのスクリーンショット機能を用いた保存等を受注者側で行うことの推奨等)をガイドライン等で明らかにするとともに、アカウントの利用停止という状況が発生した場合に採り得る対応を当事者間で取り決めておくことが望ましい旨をガイドライン等で明らかにする
今後は、本報告書で示された方向性を踏まえ、フリーランス新法に係る政令および公正取引委員会規則等の制定等に向けた検討作業が進められます。
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