「標準的な運賃」および「標準運送約款」の見直しに向けた提言が公表されました(2023/12/18)
12月15日、国土交通省の「標準的な運賃・標準運送約款の見直しに向けた検討会」は、「標準的な運賃」および「標準運送約款」の見直しに向けた提言を公表しました。
令和6年1月以降、「標準的な運賃」は運輸審議会への諮問、「標準運送約款」はパブリックコメントを経て、改正される予定となっています。
提言は、大きく分けて次の3つで構成されています。
●荷主等への適正な転嫁
・運賃水準の引上げ幅を提示
・荷待ち・荷役等の対価について標準的な水準を提示
●多重下請構造の是正等
●多様な運賃・料金設定等
具体的な内容は、次のとおりです。
【燃料価格等の高騰の状況を踏まえた「標準的な運賃」の運賃表の見直し】
●改定運賃イメージ
→ 距離制運賃は平均8.7%上昇、時間制運賃は基礎額について平均7.1%上昇
●燃料費、燃料サーチャージ
→ 「燃料サーチャージの基準価格」も120円/Lとし、その算出方法を「標準的な運賃」告示の中で明示するべき
→ 標準運送約款に燃料サーチャージの設定について明記し、適切な価格転嫁が可能となる環境を整備すべき
●労務費
→ 荷主とトラック事業者の双方が「標準的な運賃」を活用し、労務費を含むコスト上昇分の運賃への転嫁に向けて積極的な価格交渉を行うことが、ドライバーの賃上げ原資の確保の第一歩
【荷待ち・荷役作業等の輸送以外のサービスの対価に対する標準的な水準】
●待機時間料
→ 30分ごとの待機時間料は、小型車1,670円、中型車1,760円、大型車1,890円、トレーラー2,220円
●積込料・取卸料
→ 待機時間料に、「運転手(一般)」と「運転手(特殊)」、「特殊作業員」の単価の比率を乗じて、フォークリフト・ユニックを使用して行う荷役作業および手積み・手卸しによる荷役作業に係る対価の水準を提示すべき
●2時間超の荷待ち・荷役作業等に係る割増
→ 荷待ち・荷役作業等にかかる時間が合計2時間を超えた場合について、割増率を5割と設定すべき
●有料道路利用料
→ 現行告示においては実費として収受すべき費用の1つとして例示されるに留まるところ、有料道路利用料を個別に明記したうえで、標準運送約款と併せて新たに示す「運送申込書/引受書」のひな形にも明記すべき
【下請けに発注する際の手数料】
●下請けに発注する際の手数料
→ 本来負担すべき主体から収受する「料金」として明示するとともに、原価調査における「利用運送手数料」の調査結果を参考として、収受する料金の水準を示すべき
→ 「標準的な運賃」において示す「利用運送手数料」は、1回の庸車にあたり収受する金額の水準とし、複数回庸車する場合はその分を運賃とは別建てで収受する仕組みとすべき
→ 「利用運送手数料」を「標準運送約款」にも明示的に規定すべき
●積載率の向上に資する運賃・料金の設定
→ 「標準的な運賃」告示の一部として、新たに積み合わせによる「個建運賃」の考え方を規定すべき
●個建運賃
→ トラック運送事業者は、荷主との契約に際し、基準積載率を下回る積載率となる場合の最低保証料の設定、または、個建運賃での運送を行わず、貸切運賃での運送を請負うこととなる旨、あらかじめ合意しておくべき
●速達等
→ 通常見積もられる運送日時よりも短い日時での運送に係る割増運賃、荷主が十分なリードタイムを確保可能な配達を希望する場合の割引運賃、有料道路がある区間について有料道路を利用しない運送の割増運賃の運賃設定の考え方についても、見直し後の「標準的な運賃」告示に明記すべき
●その他
→ 「標準的な運賃」で特殊車両割増しの対象としてその割増水準を示す特殊車両を冷蔵車・冷凍車以外にも拡大し、各種の特殊車両の割増率を告示上に明示するべき
【標準運送約款】
●荷待ち・荷役作業等の運送以外のサービスの対価
→ 「積込み」「取卸し」等の運送以外の業務は、「第2章 運送業務」から分離し、第3章を「積込み又は取卸し等」としたうえでこの中に位置づけ、業務区分の明確化を図るべき
→ トラック運送事業者が積込みまたは取卸しを引き受けた場合、契約にない取卸し等を含め、積込料・取卸料を収受する旨を明記すべき
●契約の書面化・電子化
→ 運送を申し込む荷送人、運送を引き受けるトラック運送事業者は、それぞれ運賃、料金、附帯業務等を記載した書面(電磁的方法を含む)を交付(運送申込書/引受書)することとすべき
●下請構造の可視化
→ 利用運送を行う元請運送事業者は、当該運送の全部または一部について運送を行う実運送事業者の商号・名称等を荷主に通知しなければならないこととし、下請構造の可視化を図ることとすべき
→ 多重下請構造下にあっても、実運送事業者が適正運賃を収受できるよう、利用運送に係る費用は「利用運送手数料」として、運賃・料金とは別途収受する旨新たに明記すべき
●その他
→ 中止手数料の請求を開始できるタイミングおよび中止手数料の金額について、引越運送、貸切バス、旅行の解約手数料等を参考としつつ、見直すべき
→ 運賃・料金等の店頭に掲示することとされている事項について、インターネットによる公表を可能とすべき
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