雇用保険制度の見直しに関する制度設計案が示されました(2023/12/12)
12月11日、第188回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会が開催され、雇用保険制度の見直しに関する制度設計案が示されました。
示されたのは次の3点に関する案です。
●雇用保険の適用拡大
●育児休業給付等
●教育訓練給付等
具体的には、次のような案が示されています。
【雇用保険の適用拡大】
●週所定労働時間20時間未満の労働者について、雇用保険の適用を拡大し、雇用のセーフティネットを拡げる。具体的には、2028年度中に週所定労働時間10時間以上の労働者まで適用範囲を拡大する。
●新たに適用拡大となる被保険者の給付は、現行の被保険者と同様とし、適用要件を満たした場合、失業等給付(基本手当等、教育訓練給付等)、育児休業給付、雇用保険二事業の対象とする。保険料率等についても同水準として設定する。
●以下の基準については、週所定労働時間10時間以上の労働者まで適用拡大することに対応し、現行の2分の1として設定する。
・被保険者期間の算定基準
・失業認定基準
・法定の賃金日額の下限額(①)、最低賃金日額(②)
(注)「①を毎月勤労統計の平均定期給与額の変化率を用いて毎年自動改定した額」と②を毎年比較し、高い方を賃金日額の下限額として設定
【育児休業給付等】
●育児休業給付の給付率の引上げ
・制度概要
→ 子(養子を含む)の出生直後の一定期間内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者がともに14日以上の育児休業(出生時育児休業を含む)を取得した場合に、その期間について、28日間を限度に、休業開始時賃金日額の13%を支給し、育児休業給付の給付率を現行の67%(手取りで8割相当)から、80%(手取りで10割相当)へと引き上げる。
→ ただし、被保険者の配偶者が育児休業を取得することができない場合や配偶者が産後休業を取得している場合には、配偶者の育児休業の取得を要件としない。
→ 給付率引上げの要件とする育児休業期間は、14日以上とする。
・施行時期
→ 2025年度から実施
●育児時短就業給付(仮称)の創設
・制度概要
→ 被保険者(注1)が2歳未満の子(養子を含む)を養育するために、時短勤務(注2)を選択した場合に、「育児時短就業給付金(仮称)」として、時短勤務中の各月に支払われた賃金の10%を支給する。
(注1)開始日前2年間にみなし被保険者期間が12カ月以上あることを要件とする。
(注2)給付対象となる時短勤務の労働時間(または日数)について、制限を設けない。
(注3)賃金と給付額の合計が時短勤務前の賃金額を超えないように、一定の賃金額を超えた場合には給付率を逓減させる。
・施行時期
→ 2025年度から実施
【教育訓練給付等】
●教育訓練給付
→ 専門実践教育訓練給付金について、現行の資格取得および就職等を実現した場合の追加給付に加えて、教育訓練の受講前後を比べ、賃金が一定(5%)以上上昇した場合には、現行の追加給付を受けていることを前提として、さらに受講費用の10%(年間上限8万円)を追加で支給する。また、特定一般教育訓練給付金について、新たに資格取得し、就職等した場合には、受講費用の10%(上限年間5万円)を追加で支給する。
→ これらの拡充については、2024年度中に実施
●教育訓練支援給付金(暫定措置)
→ 給付率を基本手当日額の60%としたうえで暫定措置を2025年度から2年間延長する。
●訓練期間中の生活を支えるための新たな給付
・基本的な考え方
→ 在職中に教育訓練を受けるために休業等を行う場合においても、教育訓練に専念するために自己都合により離職した場合と同視し得ることから、基本手当に相当する給付を支給するという考え方に基づき、制度設計を行う。
・対象者
→ 企業の制度を利用して、無給で、自主的に教育訓練のための休暇を取得した一般被保険者であって、次のいずれにも該当する者。
① 休暇開始前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上ある者
② 被保険者であった期間が5年以上ある者
・給付額
→ 所定給付日数は正当な理由なく自己都合により離職した者と同じもの(被保険者期間に応じて90日、120日または150日 )とする。
→ 教育訓練休暇給付金の受給後に離職した場合は、休暇取得前の被保険者であった期間は、基本手当を受給する際の受給資格の決定や所定給付日数の算定に用いる期間から除く。
→ ただし、この場合に新たな給付の受給に伴い基本手当の受給資格を満たさなくなる場合、倒産、解雇により離職した者等に限り、最低限の基本手当(所定給付日数が90日等)を支給する。
・施行時期
→ 2025年度中に実施
●教育訓練受講のための新たな融資制度
→ 雇用保険被保険者や受給資格者ではない者(雇用保険の適用がない雇用者や離職者、雇用保険の受給が終了した離職者、フリーランス等から雇用されることを目指す者など)であって、一定年数(3年)以上就業したことがあるものを対象に、自らが受ける教育訓練に関してその受講費用と訓練期間中の生活費用を対象に融資を行う。
→ 融資の対象となる教育訓練の範囲をあらかじめ設定するとともに、より教育訓練の効果を高めるためインセンティブとして、訓練受講後に賃金が上昇した場合に一定額の返済を免除する措置を設ける。
→ 2025年度中に実施
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