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「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が公開されています(2023/11/30)

11月29日、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局と公正取引委員会は、連名で「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公開しました。

本指針は、コスト構造において労務費の占める割合が高い業種を重点的な調査対象として実施された特別調査の結果を踏まえ、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストのうち、労務費の転嫁に係る価格交渉について、発注者および受注者それぞれが採るべき行動/求められる行動を、12の行動指針として取りまとめたものです。

本指針に沿わないような行為をすることにより、公正な競争を阻害するおそれがある場合には、公正取引委員会において独占禁止法および下請代金法に基づき厳正に対処していく、とされています。

他方、記載のすべての行動を適切に採っている場合には、取引条件の設定にあたり取引当事者間で十分に協議が行われたものと考えられ、通常は独占禁止法および下請代金法上の問題は生じないと考えられる、とされています。

【発注者として採るべき行動/求められる行動】
1 本社(経営トップ)の関与
2 発注者側からの定期的な協議の実施
3 説明・資料を求める場合は公表資料とすること
4 サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと
5 要請があれば協議のテーブルにつくこと
6 必要に応じ考え方を提案すること

【受注者として採るべき行動/求められる行動】
1 相談窓口の活用
2 根拠とする資料
3 値上げ要請のタイミング
4 発注者から価格を提示されるのを待たずに自ら希望する額を提示

【発注者・受注者の双方が採るべき行動/求められる行動】
1 定期的なコミュニケーション
2 交渉記録の作成、発注者と受注者の双方での保管

指針では、発注者の行動3における「公表資料」および受注者の行動2における「資料」の例として、次のものを挙げています。

【関係者がその決定プロセスに関与し、経済の実態が反映されていると考えられる公表資料の例】
 都道府県別の最低賃金やその上昇率
 春季労使交渉の妥結額やその上昇率
・ 国土交通省が公表している公共工事設計労務単価における関連職種の単価やその上昇率
・ 一般貨物自動車運送事業に係る標準的な運賃(令和2年国土交通省告示第575号)

【そのほかの労務費の上昇を示す根拠資料の例】
・ 厚生労働省が公表している毎月勤労統計調査に掲載されている賃金指数、給与額やその上昇率
・ 総務省が公表している消費者物価指数
・ ハローワーク(公共職業安定所)の求人票や求人情報誌に掲載されている同業他社の賃金

また、価格交渉の申込み様式の例として、下記の各コスト要素の内訳を示して作成する見積書のフォーマットが示されています。

1 原材料価格(素材費、部品購入費等)
2 エネルギーコスト(電気代、ガス代、ガソリン代等)
3 労務費(定期昇給、ベースアップ、法定福利費等)
4 その他((例)設備償却費、保管料、輸送費等)