助成金の新設・拡充を含む「令和5年度 厚生労働省補正予算案」が公表されています(前編)(2023/11/13)
11月10日、厚生労働省はキャリアアップ助成金の拡充等を含む「令和5年度 厚生労働省補正予算案」(以下、「補正予算案」という)を公表し、助成金の新設・拡充については、同日より雇用保険法施行規則の改正省令案(概要)のパブリックコメント募集も開始ました。
補正予算案は、次の5つを柱としています。
Ⅰ 医療・介護・障害福祉等分野における物価高騰等への対応
Ⅱ 三位一体の労働市場改革の推進等
Ⅲ 次なる感染症に備えた対策等
Ⅳ DX・イノベーションの推進
Ⅴ 国民の安全・安心の確保
ここでは、全業種に関係する「Ⅱ 三位一体の労働市場改革の推進等 」に関する施策から助成金の新設・拡充に関するものを紹介し、11月14日分で「Ⅰ 医療・介護・障害福祉等分野における物価高騰等への対応」に関する施策を紹介します。
助成金の新設・拡充に関する情報として、次の3つがあります。
●キャリアアップ助成金(正社員化コース)の拡充
●産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)の新設
●両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース(仮称)の新設
【キャリアアップ助成金(正社員化コース)の拡充】
●概要
・正社員化のさらなる促進のため、助成額を見直す
・有期雇用期間が長期化している非正規雇用労働者に対する正社員化を支援するため、支給要件の緩和を図る
・正社員化に新たに取り組む事業主に対する支援を強化するため、正社員転換制度の導入に係る加算措置を新設する
・正社員化にあたり、「多様な正社員」の選択が可能となるよう、多様な正社員制度の導入に係る支援を拡充する
●助成金の金額 (1人当たり)
・中小企業:(現行)57万円 →(拡充)80万円
・大企業:(現行)42万7,500円 →(拡充)60万円
●対象となる有期雇用労働者等の要件緩和(拡充)
・対象となる有期雇用労働者等の雇用期間:(現行)6カ月以上3年以内 →(拡充)6カ月以上
●正社員転換制度の規定に係る加算措置(新設)
・正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合(注1)
→ 中小企業:20万円、大企業:15万円
(注1)1事業所当たり加算額(1事業所当たり1回のみ)
(注2)「無期→正規」の転換制度を新たに規定した場合も同額を加算
●多様な正社員制度の規定に係る加算措置(拡充)
・「勤務地限定・職務限定・短時間正社員」制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合(注3)
→中小企業:(現行)9.5万円 →(拡充)40万円
大企業:(現行)71,250円 →(拡充)30万円
(注3)1事業所当たり加算額(1事業所当たり1回のみ)
(注4)「無期→正規」の転換制度を新たに規定した場合も同額を加算
【産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)の新設】
●概要
景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた中小企業事業主等が生産性向上等に必要な新たな人材を雇い入れた場合に、当該事業主に対して当該人材に係る賃金の一部を助成する
●対象事業主
・景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた中小企業事業主等
・生産性向上等に必要な新たな人材を雇い入れた事業主
(注1)中小企業庁の事業再構築補助金またはものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の一部の枠において採択され、交付決定を受けている事業主が本助成金の対象となります。
●助成要件
補助事業の前後を通じて、労働者の雇用を確保したうえで、生産性向上等に必要なスキル等を保有する労働者(注2)を1人以上、常時雇用する労働者として雇い入れること
(注2)専門的な知識等を有する年収350万円以上の者
●助成額
・中小企業 :250万円(6カ月ごとに125万円×2期)
・中小企業以外:180万円(6カ月ごとに90万円×2期)
本コースの新設に伴い、当分の間支給することとされていた産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)は廃止され、対象人材を令和7年3月31日までに雇い入れた場合の助成に限ることとされます。
【両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース(仮称))の新設】
●概要
両立支援等助成金の一部を見直し、育児休業取得時の業務代替支援を独立・拡充させた「育休中等業務代替支援コース」(仮称)を創設
●主な要件
対象労働者の育児休業取得や育児短時間勤務期間中の業務体制整備のため、業務を代替する周囲の労働者への手当支給や、代替要員の新規雇用(派遣受入れ含む)等を実施すること
●支給額
下記①~③合計で1年度10人まで、初回から5年間
① 育児休業中の手当支給
→ 業務体制整備経費:5万円(育休1カ月未満:2万円)
→ 業務代替手当:支給額の4分の3(注1)
→ 最大125万円
(注1)上限10万円/月、12カ月まで
②育短勤務中の手当支給
→ 業務体制整備経費:2万円
→ 業務代替手当:支給額の4分の3(注2)
→ 最大110万円
(注2)上限3万円/月、子が3歳になるまで
③ 育児休業中の新規雇用
→ 代替期間に応じ以下の額を支給
・最短:7日以上:9万円
・最長:6カ月以上:67.5万円
→ 最大67.5万円
●加算措置/加算額
・プラチナくるみん認定事業主は、上記①・③を以下のとおり割増
① 育児休業中の手当支給
→ 業務代替手当の支給額を5分の4に割増
② 育児休業中の新規雇用
→ 代替期間に応じた支給額を割増
・最短:7日以上:11万円
・最長:6カ月以上:82.5万円
・育休取得者/制度利用者が有期雇用労働者の場合、支給額(上記①~③)に10万円加算(1カ月以上の場合のみ)
・申請前の直近年度に係る育児休業等に関する情報(注3)を「両立支援のひろば」サイト上で公表した場合、2万円加算
(注3)男性の育児休業等取得率、女性の育児休業取得率、男女別の平均育休取得日数
(注4)出生時両立支援コース、育児休業等支援コース、育休中等業務代替支援コース(仮称)で各1回限り
これにより、出生時両立支援コースにおける代替要員加算、育児休業等支援コースにおける業務代替支援は廃止され、「育休中等業務代替支援コース助成金(仮称)」に再編されます。
なお、雇用保険法施行規則の改正省令案(概要)のパブリックコメント募集における資料によれば、令和5年12月上旬に改正省令を公布し、公布日より施行(両立支援等助成金については令和6年1月1日)予定となっています。
≪ 助成金の新設・拡充を含む「令和5年度 厚生労働省補正予算案」が公表されています(後編) | 協会けんぽより「年収(130万円)の壁」への対応に関する情報が公表されています ≫