お知らせ

個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会の報告書素案が示されています(2023/8/2)

7月31日、第13回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会が開催され、報告書素案が示されました。

業務上災害の報告の仕組み等、引き続き詳細を検討中の項目がありますが、フリーランスや個人事業主を労働安全衛生法の対象に含める方向で、今後、法令の整備が進められると報道されています。

次のような構成となっています。

1 個人事業者等の業務上の災害の把握等
(1)業務上災害の報告の仕組み
(2)業務上の脳・心臓疾患および精神障害の報告の仕組み
(3)業務上災害の分析等
2 個人事業者等の危険有害作業に係る災害を防止するための対策
(1)個人事業者等自身による措置やその実行性を確保するための仕組み
(2)注文者(発注者)による措置
(3)発注者以外の災害原因となるリスクを生み出す者等による措置
(4)個人事業者等に作業の一部を請け負わせる事業者による対策
3 個人事業者等の過重労働、メンタルヘルス、健康確保等の対策
(1)個人事業者等自身による健康管理
(2)個人事業者等に対して健康リスクを生み出す者等による措置
4 個人事業者や小規模事業者に対する支援

ここでは、個人事業主等を労働安全衛生法の対象を含めるにあたって新たに設けることが検討されている規制のうち、主な内容を紹介します。

【業務上の脳・心臓疾患および精神障害の報告の仕組み(上記1(2))】
個人事業者の過重労働による脳・心臓疾患および精神障害事案
 → 個人事業者の過重労働による脳・心臓疾患および精神障害事案について、個人事業者自身が労働基準監督署に報告することができる仕組みを整備する
 → その際、業種・職種別団体(特別加入団体を含む。以下同じ)が当該個人事業者による報告を代行する等の支援をすることができることとする
 → 報告する項目(注)
   ① 報告者に関する情報(個人事業者等に代わって業種・職種別団体等が報告する場合)
   ② 被災者の氏名、年齢、性別、業種、職種
   ③ 発症日時
   ④ 死亡または休業見込み(報告時点で確認できる範囲で可とする)
   ⑤ 脳・心臓疾患および精神障害の概要およびこれを発症するに至った原因(確認または推定が可能な範囲で可とする)
   ⑥ その他、脳・心臓疾患および精神障害の発症と関連のある情報(直近、6カ月の就業時間数、ストレスと感じていた要因等)
 (注)②から⑥については個人事業者等に代わって業種・職種別団体等が報告する場合は確認可能な範囲で可とする、とされています。

中小企業経営者や役員の脳・心臓疾患および精神障害事案
 → 他の業務上災害と同様に、所属企業に報告を求めることとする

個人事業者が労働者としても就業している場合の過重労働による脳・心臓疾患および精神障害事案
 → 個人事業者(労働者)自身が労働基準監督署に報告することができる仕組みを整備する
 → その際、業種・職種別団体または当該労働者を使用する事業者が当該個人事業者による報告を代行する等の支援をすることができることとする
 → 労働者としても就業している個人事業者が、労働者として就業していることが原因で脳・心臓疾患または精神障害になったとして労災認定された事案については、当該労働者を雇用する事業者が労働者死傷病報告を提出する


【注文者(発注者)による措置】
上記の内容は、概ね現行の規制を個人事業者等にも拡大する案が示されていますが、(2)の次の項目は、明確化や整理を求める内容となっています。

・注文者の責務の範囲の明確化(法3条3項関係)
・注文者等による安全上の指示(法29条関係)
・建設業等における混在作業現場における連絡調整(法30条、30条の2関係)
・建設業等以外の業種の混在作業場所における連絡調整

【発注者以外の災害原因となるリスクを生み出す者等による措置】
上記(3)には、プラットフォーマー等仕組みを提供する者に関する次の内容が盛り込まれています。

・プラットフォーマーが個人事業者等に行わせる危険有害業務の内容によっては、法3条3項の規定がプラットフォーマーにも当てはまる場合がある旨を解釈例規やガイドラインの策定といった手段を通じて明確化することにより、プラットフォーマーが配慮すべき具体的内容を明確にする
・別途、フリーランス保護の観点から検討がなされているフリーランスに関する各種施策とも連携のうえ、国は、上記の趣旨を様々なチャンネルを通じ、事業者や注文者、プラットフォーマー、個人事業者等に広く周知させる
・プラットフォーマー等の業務形態や契約に着目した新たな規制の枠組み、諸外国の規制動向等にも注視しつつ、労働安全衛生法の既存の枠組みでは捉えきれない課題への対応についても将来的な検討課題の把握に努める