お知らせ

持続可能な物流の実現に向けた検討会の最終取りまとめ(案)が示されました(2023/5/26)

5月19日、第10回持続可能な物流の実現に向けた検討会が開催され、トラック運送業の2024年問題への対応を含む持続可能な物流の実現に向けた検討会の最終取りまとめ(案)が示されました。

取り組むべき政策として、次の3つが示されています。

 荷主企業や消費者の意識改革
 物流プロセスの課題の解決(非効率な商慣習・構造是正、取引の適正化、着荷主の協力)
 物流標準化・効率化(省力化・省エネ化・脱炭素化)の推進に向けた環境整備

個々の内容は、次のとおりです。

【荷主企業や消費者の意識改革】
荷主企業・物流事業者の物流改善を評価する仕組みの創設
 → 荷主企業・物流事業者による物流改善の取組・実施状況が、消費者や市場からの評価につながるように、物流改善の取組み等についてランク評価を行う等、取組みを進めるインセンティブとなる仕組みを創設すること。また、取組を推進するにあたっては、業界ごとにサプライチェーンの形態が異なることから、業界固有の特性等を反映できるようにすることが必要。

経営者層の意識改革を促す措置
 → 一定規模以上の貨物の引渡しまたは受取りを行う荷主企業が経営者層を中核として物流改善に取り組むため、物流に関する管理責任者を任命し、当該管理責任者を中心として、後述する中長期計画の策定等の取組みを推進する措置について、その要件等の具体的な検討を進めること。また、そのようなサプライチェーンの全体最適化の視点から物流を捉えることができる高度物流人材を育成・確保することが必要であり、そのために産学官で連携した取組みを支援すること。

消費者の行動変容を促す方策の実施
 → 1回で荷物を受け取ることや、注文の際の余裕を持った配達日設定(輸送モードの設定も含む)や、配達日の分散に対してインセンティブを付与するなど、消費者の行動変容につながる施策を実施すること。

【物流プロセスの課題の解決(非効率な商慣習・構造是正、取引の適正化、着荷主の協力)】
待機時間、荷役時間等の労働時間削減に資する措置および納品回数の減少、リードタイムの延長等、物流の合理化を図る措置の検討
 → 企業規模に関わらず取り組むべき事項を「判断基準」として示すとともに、一定規模以上の貨物の引渡しまたは受取りを行う荷主企業や、一定規模以上の貨物を取り扱う物流事業者に対して、中長期計画の作成および定期報告を行うことを義務付けるとともに、実効性確保の手段として取組状況が著しく不十分な場合には勧告・措置命令等を行う法的措置について、具体的な検討を進めるべき。
 → なお、物流業界の働き方改革を実現するためには、デジタル技術を活用して走行時間等を正確に管理することにより、物流事業者の労働時間を可視化し、荷主企業と情報共有することが効果的であり、労働時間管理に資するシステム等の導入を推進することが合わせて必要。
 → 改善基準告示の遵守状況を確認するためには、労働時間の改ざんを防止できるデジタルタコグラフの搭載・デジタル運転日報作成の義務化が必要であるとの意見が見られた。

契約条件の明確化、多重下請構造の是正等の運賃の適正収受に資する措置の検討
 → トラック業界における多重下請構造の是正や契約条件の明確化を図るため、荷主保護や実運送事業者の適正な運賃の確保による賃金水準の向上等の観点から、建設業法を参考に、荷主や元請事業者が実運送事業者を把握できるようにするための運送体制台帳(下請事業者のリスト)の作成等を求めるとともに、内航海運業法等を参考に、契約締結時の契約内容の電子・書面交付を義務付けるべき。
 → 運送体制台帳事項については、トラック事業者にとって過度な負担とならないようにすべきという意見があったことを踏まえ、事業者名や契約内容、社会保険未加入の状況等、記載事項を最小限に限ることが考えられる。

物流コスト可視化の検討
 → 運賃の適正収受を図る観点からも、基準となる商品価格を設定し、物流サービスに応じて価格を変動させる「メニュープライシング」の取組み等、商取引における物流コストの見える化を促進する施策を推進すること。

貨物自動車運送事業法に基づく荷主への働きかけ等および標準的な運賃に係る延長等所要の対応の検討
 → 荷主への働きかけおよび標準的な運賃制度について、延長等所要の対応を検討する必要がある。

トラックドライバーの賃金水準向上に向けた環境整備の検討 
 → 賃金体系のあり方を含め、トラックドライバーの賃金水準向上に向けた環境整備の検討が不可欠である。そのため、川上・川下にわたるサプライチェーン全体の関係者が、賃金水準の向上が持続可能な物流の実現に必要不可欠であると認識し、改善に向けた取組みがより一層進むような施策を検討すべき。

【物流標準化・効率化(省力化・省エネ化・脱炭素化)の推進に向けた環境整備】
デジタル技術を活用した共同輸配送・帰り荷確保等の検討
官民連携による物流標準化の推進の検討
物流拠点ネットワークの形成等に対する支援の検討
モーダルシフトの推進のための環境整備の検
車両・施設等の省エネ化・脱炭素化の推進に向けた環境整備の検討

上記のほか、「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者が取り組むべき事項(案)」として、発荷主事業者、物流事業者および着荷主事業者が取り組むべき事項が具体的に示されています。