お知らせ

これからの労働時間制度に関する検討会の報告書が公表されています(2022/7/19)

7月15日、厚生労働省は、これからの労働時間制度に関する検討会の報告書を公表しました。

7月1日の第15回検討会で示されていた骨子(案)と比べて、求められる対応についてより明確な書きぶりとなっている箇所をピックアップして紹介します。

【適用除外(管理監督者等)】
・実態により判断することが通達により示されているものの、各企業においてどのような者がこれに該当するか、適切な判断が難しいのではないかといった指摘がある。
・参考となる裁判例が集積していることや、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度といった各種法規制が整備されてきたこと、産業実態の変化等を踏まえ、適用除外の在り方については改めて検討が求められる。

【裁量労働制の対象業務】
・現行制度の下で制度の趣旨に沿った対応が可能か否かを検証のうえ、可能であれば、企画型や専門型の現行の対象業務の明確化等による対応を検討することが適当。
・対象業務の範囲については、経済社会の変化や、それに伴う働き方に対する労使のニーズの変化等も踏まえて、その必要に応じて検討することが適当。

【裁量労働制の本人同意・同意の撤回・適用解除】
・専門型・企画型いずれについても、使用者は、労働者に対し、制度概要等について確実に説明したうえで、制度適用にあたっての本人同意を得るようにしていくことが適当。
・本人同意が撤回されれば制度の適用から外れることを明確化することが適当。
・同意しなかった場合に加え、同意の撤回を理由とする不利益取扱いの禁止や、同意撤回後の処遇等について、労使で取決めをしておくことが求められる。
・業務量が過大である等により労働者の裁量が事実上失われるような蓋然性が高い場合には、裁量労働制の適用を継続することは適当ではない。さらに、労働者に裁量は委ねられているものの、業務に没頭して働き過ぎとなり健康影響が懸念されるような場合も同様。
・労働者の申出による同意の撤回とは別に、一定の基準に該当した場合には裁量労働制の適用を解除する措置等を講ずるような制度設計を求めていくことが適当。

【裁量労働制の対象労働者の要件】
・企画型では、対象労働者の要件の着実な履行確保を図るため、職務経験等の具体的な要件をより明確に定めることが考えられる。
・専門型では、まずは裁量労働制にふさわしい処遇が確保されるよう労使協議を促していくことが必要。その際、みなし労働時間制の適用により、時間外労働の時間数に比例した割増賃金による処遇以外の能力や成果に応じた処遇が可能になることも念頭に、賃金・評価制度の運用実態等を労使協議の当事者に提示することを使用者に求める等、対象労働者を定めるにあたっての適切な協議を促すことが適当。

【裁量労働制の対象労働者の裁量の確保】
・労働者において始業・終業時刻の決定に係る裁量がないことが疑われるケースがみられることから、裁量労働制は、始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを改
めて明確化することが適当

【裁量労働制の対象労働者の健康・福祉確保措置】
・労働時間の状況の把握は、現行の指針で定めている内容や、労働安全衛生法に基づく義務の内容を踏まえ、取扱いを明らかにすることが適当。
・健康・福祉確保措置は、他制度との整合性を考慮してメニューを追加することや、複数の措置の適用を求めていくことが適当。
・健康・福祉確保措置は、企画型とできる限り同様のものとすることが適当。

【裁量労働制のみなし労働時間の設定と処遇の確保】
・みなし労働時間は、対象業務の内容と、対象労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度を考慮して適切な水準となるよう設定する必要があること等を明確にすることが適当。
・みなし労働時間を超える時間に対する割増賃金の支払いにより相応の処遇を確保することも可能。
・実労働時間とは切り離したみなし労働時間の設定も可能。
・所定労働時間をみなし労働時間とする場合には、制度濫用を防止し、裁量労働制にふさわしい処遇を確保するため、対象労働者に特別の手当を設けたり、対象労働者の基本給を引き上げたりするなどの対応が必要となるものであり、これらについて明確にすることが適当。

【労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保】
・裁量労働制における導入時のみならず導入後においても、当該制度が労使で合意した形で運用されているかを労使で確認・検証(モニタリング)し、必要に応じて制度の見直しをすることを通じて、適正な制度運用の確保を継続的に図ることが期待される。
・使用者は、労使協議の当事者に対し裁量労働制の実施状況や賃金・評価制度の運用実態等を明らかにすることや、労使協議の当事者は当該実態等を参考にしながら協議し、みなし労働時間の設定や処遇の確保について制度の趣旨に沿った運用になっていないと考えられる等の場合には、これらの事項や対象労働者の範囲、業務量等を見直す必要があること等を明確にすることが適当。
・企画型について、労使委員会委員に対し決議の内容を指針に適合したものにするよう促すとともに、行政官庁が委員に対し適切に働きかけを行うことも考えられる。
・専門型では、労使委員会の活用を促していくことが適当。
・制度運用上の課題が生じた場合に、適時に労使委員会を通じた解決が図られるようにすることや、労使協議の実効性確保の観点から、過半数代表者や労使委員会の労働者側委員の選出手続の適正化、過半数代表者等に関する好事例の収集・普及を行うことが適当。併せて、労使委員会の実効性向上のための留意点を示すことが適当。
・本人同意を取る際の事前説明時等に苦情申出の方法等を積極的に対象労働者に伝えることが望ましいことを示すことが適当。
・併せて、労使委員会に苦情処理窓口としての役割を担わせるなど、相談できるような体制を整備することを企業に求めることが適当。
・企画型の定期報告について、負担を減らすことが適当。その際、健康・福祉確保措置の実施状況に関する書類の保存を義務付けることが適当。
・企画型の労使委員会決議・専門型の労使協定の本社一括届出を認めることが適当。