お知らせ

下請事業者における賃金の引上げ、労働時間の短縮等の労働条件の改善が可能となるよう価格交渉に際して協議して決定することとする下請法の規定に基づく振興基準改正案に関するパブリックコメント募集が行われていま(2022/6/6)

6月3日、中小企業庁は、下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく振興基準(以下、「振興基準」といいます)改正案のパブリックコメント募集を開始しました。

これは、新型コロナによる経済活動の停滞、原油価格・原材料価格の上昇、ロシアのウクライナ侵攻による企業物価の更なる上昇などを踏まえ、中小企業に対する価格転嫁・取引適正化が政権全体の重要課題となる中、各業界団体における自主行動計画の改定に反映されることを期待して、例年に比べて振興基準の大幅な改定を実施するものです。

なお、振興基準は次のような構成となっています。

第1 下請事業者の生産性の向上及び製品若しくは情報成果物の品質若しくは性能又は役務の品質の改善に関する事項
第2 発注書面の交付その他の方法による親事業者の発注分野の明確化及び親事業者の発注方法の改善に関する事項
第3 下請事業者の施設又は設備の導入、技術の向上及び事業の共同化に関する事項
第4 対価の決定の方法、納品の検査の方法その他取引条件の改善に関する事項
第5 下請事業者の連携の推進に関する事項
第6 下請事業者の自主的な事業の運営の推進に関する事項
第7 下請取引に係る紛争の解決の促進に関する事項
第8 下請取引の機会の創出の促進その他下請中小企業の振興のため必要な事項

ここでは、中小企業に対する価格転嫁に影響を及ぼす「第4 対価の決定の方法、納品の検査の方法その他取引条件の改善に関する事項」の「1 対価の決定の方法の改善」の主な改正案を確認します。

(1) 取引対価は、合理的な算定方式に基づき、下請事業者の適正な利益を含み、下請事業者における賃金の引上げ、労働時間の短縮等の労働条件の改善が可能となるよう、親事業者および下請事業者が十分に協議して決定するものとする。

(2) 親事業者および下請事業者は、少なくとも年に1回以上の協議を行うものとする。親事業者は、発注の都度、協議を行うものとするほか、継続的な発注について下請事業者からの申出があったときは、定期的な協議に応じるものとする。さらに、労務費、原材料費、エネルギー価格等のコストが上昇した場合または発注内容を変更した場合であって、下請事業者からの申出があったときは、定期的な協議以外の時期であっても、遅滞なく協議に応じるものとする。

(3) 親事業者は、業種、地域等に応じた一般的な賃金の引上げ水準を十分に考慮しつつ、下請事業者との間の取引対価を決定するものとする。その際、できる限り、自社における賃金の引上げ率に見劣りしない水準の賃金の引上げが下請事業者においても実現できるような取引対価の決定に努めるものとする。特に、最低賃金の引上げ、人手不足への対処等、外的要因により下請事業者の労務費の上昇があった場合には、その影響を十分に踏まえて取引対価を決定するものとする。

(4)建設、大型機器の製造その他における見積りおよび発注から納品までの期間が長期にわたる取引においては、親事業者は、前払い比率および期中払い比率をできる限り高めるよう努めるものとする。また、これらの取引において、期中に労務費、原材料費、エネルギー価格等のコストが上昇した場合であって、下請事業者からの申出があったときは、親事業者は、期中の価格変更にできる限り柔軟に応じるものとする。

(8)親事業者は、下請代金支払遅延等防止法で禁止する買いたたきを行わないことを徹底する。その際、特に、以下のような方法で取引対価を決定することは、下請法上の買いたたきに該当するおそれがあることに留意するものとする。
① 労務費、原材料費、エネルギー価格等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと。
② 労務費、原材料費、エネルギー価格等のコストが上昇したため、下請事業者が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面等で下請事業者に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと。

また、今般の改正は「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」における取りまとめの内容を着実に実施するためのもので、同パッケージにおいては、労働基準監督機関における対応として、次の取組みが示されています。

・労働基準監督機関による定期監督において、賃金引上げの意向や労働条件の改善状況を確認するとともに、労使において賃金の引上げを行うとの取決めを行ったにもかかわらず賃金支払が履行されず、度重なる指導でも是正しない事業場や定期賃金や割増賃金を適切に支払わず同様の法違反が繰り返される事業場については、司法処分を含め厳正に対応
・労働基準監督機関の立入検査・監督指導(臨検監督)の際に労働基準関係法令違反が認められなくても、賃金引上げの阻害要因として「買いたたき」等が疑われる事案については、労働基準監督機関から公正取引委員会や中小企業庁、国土交通省に通報