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解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会報告書案が示されました(2022/4/12)

4月11日、第17回解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会が開催され、2018年6月からの検討結果をまとめた報告書案が示されました。

報告書は、仮に解雇無効時の金銭救済制度(以下、「本制度」という)を導入するとした場合に法技術的に取り得る仕組みや検討の方向性等に係る選択肢等を示すもので、制度導入の是非については、労働政策審議会において、本制度が果たすと予想される役割やその影響などを含む政策的観点も踏まえて、労使関係者も含めた場で検討すべきものであるとされています。

そのうえで、仕組みや検討の方向性等については、主に次のように示されています。

【制度の骨格】
「無効な解雇がなされた場合に、労働者の請求によって使用者が労働契約解消金を支払い、当該支払によって労働契約が終了する仕組み」を念頭に置き、以下の2つの構成を検討
形成権構成:要件を満たした場合に労働者に金銭救済を求め得る形成権(以下、「金銭救済請求権」という)が発生し、それを行使した効果として、(1)労働者から使用者に対する労働契約解消に係る金銭債権(以下、「労働契約解消金債権」という)が発生するとともに、(2)使用者が当該労働契約解消金を支払った場合に労働契約が終了するとの条件付き労働契約終了効が発生する
形成判決構成:労働者の請求を認容する判決が確定した場合、その効果として上記(1)、(2)の効果が発生するとの構成であり、要件を満たした場合に労働者に判決によるこのような法律関係の形成を求める権利が発生する

【対象となる解雇・雇止め】
無期労働契約における無効な解雇(禁止解雇を含む)
有期労働契約における無効な契約期間中の解雇(禁止解雇を含む)
労働契約法19条に該当する雇止め

【権利の発生要件等】
(1)当事者間に労働契約関係が存在すること
(2)使用者による解雇の意思表示がされたこと
(3)当該解雇が無効であること
なお、ここでの検討は、主張立証責任についての現在の裁判実務を変更する趣旨のものではないとされている。

【権利行使の方法】
形成権構成の場合であっても、当面は、権利行使の方法は訴えの提起および労働審判の申立てに限ることが考えられる。

【解雇の意思表示の撤回】
使用者が解雇の意思表示をした後に、解雇が無効であることを争わないとしてそれを撤回したとしても、労働契約解消金の支払請求を妨げる事由とはならないとすることが考えられる。

【労働契約解消金の定義】
次のようなものが考えられるところ、定義をどのように定めるかは、その性質や考慮要素等の検討とも関連しており、本制度の機能等も考慮したうえで政策的に判断すべき。
(1)無効な解雇がなされた労働者の地位を解消する対価
(2)無効な解雇により生じた労働者の地位をめぐる紛争について労働契約の終了により解決する対価

【労働契約解消金の構成および支払いの効果】
バックペイ債権とは別個の債権であると整理することが考えられるが、労働契約解消金の支払いのみによって労働契約が終了する構成だけでなく、バックペイの履行確保の観点から、労働契約解消金に加えてバックペイの支払いもなされたときに労働契約が終了するという構成も考えられる。

【各請求との関係】
バックペイ、不法行為による損害賠償、退職手当の各債権とは別個のものと整理し得るため、それぞれの請求や地位確認請求と併合して訴え提起等をすることができる。
バックペイについては、解雇から労働契約解消金支払時まで発生すると解することが原則であり、1回の訴訟で認められる範囲については一般的にみられる判決確定時までとの判断を変更する特段の規定を設ける必要はないと考えられる。

【労働契約解消金の算定方法・考慮要素】
算定方法:予見可能性を高めるために一定の算定式を設けることを検討する必要がある一方で、個別性を反映するために個別事情を考慮するとすることも考えられる。
考慮要素:定型的なものである給与額、勤続年数、年齢、ある程度定型的な算定をし得るものである合理的な再就職期間、評価的なものである解雇に係る労働者側の事情、解雇の不当性、といったものが考えられる。

【有期労働契約の場合の契約期間中の解雇・雇止め】
有期労働契約の場合に特に考慮するべき論点として、次のものが挙げられている。
権利の消滅等の検討に関して再度期間が満了した場合等の取扱い
労働契約解消金の算定方法等の検討に関して残りの契約期間等を考慮要素とするか   など