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「令和2年度 年次経済報告」にみる同一労働同一賃金の取組みと賃金の動向について(2020/11/14)

11月6日の閣議に提出された「令和2年度 年次経済財政報告」の第2章にて、「感染症拡大の下で進んだ柔軟な働き方と働き方改革」がまとめられ、働き方の変化による影響および働き方改革の進捗の確認や効果の検証等がなされています。
ここでは、その中から同一労働同一賃金の取組みや影響に関する内容を取り上げます。

【JIL調査結果(2019年7月実施)にみる待遇の違い】
企業調査
定期的な昇給、人事評価・考課、賞与、退職金、家族手当、住宅手当、精皆勤手当について、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者が支給・適用対象になっている割合に差がみられる。
労働者調査
業務の内容等が同じ正社員と比較して納得できないと回答したパートタイムまたは有期雇用労働者の割合は、「賞与」37.0%、「定期的な昇給」26.6%、「退職金」23.3%、「人事評価・考課」12.7%。

【内閣府企業調査結果にみる2015年以前から2019年度までの動き】
各種取組みの実施率(2019年度末)
 ・「業務内容の明確化」35.2%、「給与体系の見直し」34.0%、「諸手当の見直し」31.3%、「福利厚生制度の見直し」21.2%、「人事評価の一本化等」17.7%。
給与面での動き
 ・大企業(常用労働者1,000人以上)に雇用される正社員・正職員(雇用期間の定め無し)と正社員・正職員以外の一時間当たり所定内給与額では、男女とも、正社員・正職員は近年増加傾向。
 ・正社員・正職員以外は雇用期間の定めの有無に限らず、正社員・正職員ほどは増加していない。
 ・他の規模についても、100~999人規模で正社員・正職員の一時間当たり所定内給与額が下がっているのを除いて同様の傾向。
年間賞与その他特別給与額
 ・男性正社員・正職員が2018年から減少。男性正社員・正職員以外(雇用期間の定めなし)や女性正社員・正職員は2019年に増加。
 ・100~999人規模においても同様の傾向がみられるが、10~99人規模においては、男性正社員・正職員以外(雇用期間の定め無し)は減少。

【厚生労働省「毎月勤労統計」にみる2020年夏の特別給与(6-7月平均)】
一般労働者が3.7%減少し、204,713円。
パートタイム労働者は前年比17.3%増加し、6,288円。

【内閣府企業調査(2020年3月実施)にみる同一労働同一賃金の実現に向けた課題】
「費用がかさむ」30.4%、「取り組むべき内容が不明確」19.5%、「社内慣行や風習を変える事が難しい」18.7%、「効果的な対応策がない、分からない」16.5%、「業務の柔軟な調整」16.1%。

【傾向スコアマッチングを用いた差の差分析にみる働き方改革の雇用や生産性への影響】
給与体系の見直しを行った企業群
 ・非正規雇用労働者の割合が 0.8%ポイント低下、正社員の総労働時間は 2.9時間、非正規雇用労働者の総労働時間は 18.6時間減少。
 ・正社員と非正規雇用労働者の労働費用の平準化により労働が非正規雇用労働者から正社員にシフト、非正規雇用労働者の給与負担増により非正規雇用労働者を減らしたことを示唆。
 ・生産性や離職率への影響はみられない。
諸手当の見直しを行った企業群
 ・非正規雇用労働者の割合が低下(2.4%ポイント)、正社員の総労働時間は 5.6時間減少。
 ・雇用を正社員化しつつ、正社員の労働時間を削減することで負担を補っている可能性も示唆。
 ・生産性は有意ではないものの、取り組んだ企業群のほうが上昇する傾向、離職率は有意に低下(1.2%ポイント)。
福利厚生制度の見直し
 ・非正規雇用労働者の比率、総労働時間、生産性、離職率ともに有意な違いはなし。
業務内容の明確化
 ・非正規雇用労働者の比率や労働者の総労働時間には有意な違いは生じない一方、取り組んだ企業群のほうが生産性は有意に上昇し、離職率は有意に低下。

【傾向スコアマッチングを用いた差の差分析にみる働き方改革の取組みによる採用動向への影響】
入職率増加に影響を与えた取組み
 ・「有休取得目標の設定」11.8%、「残業時間の人事評価項目への追加」13.2%、「諸手当の見直し」11.6%。
中途採用増加に影響を与えた取組み
 ・残業時間の人事評価項目への追加を行った企業群で中途採用が増加する傾向(2.8%)。
 ・人事評価の見直し(正社員、非正規雇用労働者の人事評価の一本化、非正規雇用労働者の人事評価制度の導入等)を行った企業群でも中途採用が増加(2.2%)。
 ・有休取得目標の設定と業務内容の明確化を行った企業群では、(離職率低下に伴い)中途採用が減少。