お知らせ

「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の施策パッケージ案が示されました(2025/5/15)

5月14日、第34回新しい資本主義実現会議が開催され、物価上昇を1%程度上回る賃金上昇を定着させるために2029年度までの5年間で取り組む「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の施策パッケージ案が示されました。

目指すべき方向性として、次の4つが示されています。

 国・自治体・業種ごとの価格転嫁状況の徹底的な可視化と改善
 5年間60兆円の官民での生産性向上投資と全国2,000を超える者によるきめ細かな支援
 336万者の経営者全員がいつでも事業承継・M&A等を相談できる支援体制の構築
 地域で活躍する人材の育成と処遇改善

ここでは、を除いて主な内容を紹介します。

【国・自治体・業種ごとの価格転嫁状況の徹底的な可視化と改善】
労務費等の価格転嫁のさらなる推進
 → 労務費転嫁指針の遵守がサプライチェーンの深い層まで徹底されているか、重点22業種(注)について確認し、必要に応じさらなる改善策を検討するとともに、さらなる周知徹底に取り組む
 (注)警備業、地方公務、インターネット付随サービス業、ビルメンテナンス業、輸送用機械器具製造業、金属製品製造業、家具・装備品製造業、はん用機械器具製造業、業務用機械器具製造業、生産用機械器具製造業、印刷・同関連業、情報サービス業、映像・音声・文字情報制作業、広告業、総合工事業、不動産取引業、不動産賃貸業・管理業、技術サービス業、道路貨物運送業、倉庫業、運輸に付帯するサービス業、自動車整備業(令和6年1月22日「政労使の意見交換」)

 → サプライチェーンの深い層まで労務費等の価格転嫁を浸透させるため、労働基準監督署が企業への監督指導等の機会をとらえ、労務費転嫁指針の活用や公正取引委員会・中小企業庁等の窓口の活用も含め、中小・小規模企業の賃上げの原資の確保に向けた働きかけを実施する

【5年間60兆円の官民での生産性向上投資と全国2,000を超える者によるきめ細かな支援】
業種別の「省力化投資促進プラン」 の策定・実行
 → 人手不足が深刻で生産性向上の必要性が高い業種について、業種別に目標を設定し「省力化投資促進プラン」を実行
   ・飲食業:労働生産性を35%向上
   ・宿泊業:労働生産性を35%向上
   ・小売業:労働生産性を28%向上
   ・生活関連サービス業のうち、理容業、美容業、クリーニング業:労働生産性を29%向上
   ・自動車整備業:労働生産性を25%向上
   ・製造業(繊維工業、プラスチック製品製造業、食品製造業等)の労働生産性を24%向上
   ・運輸業:労働生産性を、鉄道分野18%、自動車(物流)分野25%、自動車(旅客運送)分野26%、水運分野22%、造船・舶用工業分野含む輸送用機械器具製造業分野21%向上、航空分野5%向上
   ・建設業:労働生産性を9%向上
   ・医療:労働生産性の向上の取組みにより、医師・看護師の時間外労働の削減、合理的な配置基準の見直しを目指す
   ・介護:労働生産性の向上の取組みにより、老人保健施設、介護老人福祉施設、特定施設入居者生活介護指定施設で、2029年までに8.1%、2040年までに33.2%の業務効率化(人員配置の柔軟化)を目指す
   ・障害福祉:ICT活用等により業務量の縮減を行う事業所の比率が2029年に90%以上を目指す
   ・保育:保育現場へのICTの導入等により、保育士がこどもと向き合う時間を確保する
   ・農業:1経営体当たりの生産量を2030年までに2023年比で約1.8倍にすることを目指す
   ・林業:2030年に木材生産に係る林業経営体の生産性を2022年比で5割向上することを目指す
   ・水産業:2030年に漁業就業者1人当たりの漁業生産量を2020年比で3割向上することを目指す

 → ⅰ)各業種のフロントヤードでの業務効率化の鍵となる製品・システムの導入促進、ⅱ)各業種の実情に応じたバックオフィスでのデジタルツールの導入促進を後押しするため、補助金や「賃上げ」支援助成金パッケージ等の活用の推進等を実施する

地域内での人事・採用機能や専門人材の共有化
 → 商工会・商工会議所、地域金融機関、自治体等と連携して、人材の副業・兼業等を通じながら、地域内で人事機能や専門人材の知見を共有化するといった先進事例の横展開を促す

人手不足分野における人材確保支援の強化や副業・兼業のマッチング推進
 → 医療・介護、子育て等の分野における人材確保のため、ハローワークにおいて副業・兼業のマッチングを推進するとともに、支援する他の関係機関との連携を図る

【地域で活躍する人材の育成と処遇改善】
社内外のスキル・賃金水準の可視化と効果的な情報提供
 → 官民の求人・求職・キャリアアップ情報を共有化し、キャリアコンサルタントや求職者等にわかりやすく発信する取組みを加速する
 → 経験や資格の有無と賃金との関係を分析し、これらの結果を、職業情報提供サイト(job tag)等を通じて発信する

医療・介護・保育・福祉等の現場での公定価格の引上げ
 → 働く方々の処遇について公的に価格が定まっており、近年のコストの増加分を価格に転嫁することができず他産業と比較して有効求人倍率が高くなっているため、次期報酬改定をはじめとした必要な対応策について、2025年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等を踏まえながら、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う