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貨物軽自動車運送事業の自動車運転者が「労働者」に該当すると労働基準監督署により判断された事例が取りまとめられています(2023/12/22)

12月21日、厚生労働省は、「労働基準法上の労働者に該当すると判断された事例(貨物軽自動車運送事業の自動車運転者)」を公表しました。

労災請求や報酬(賃金不払い)に関する相談で「労働者」に該当すると労働基準監督署により判断された事例について、「労働者性の判断基準」に沿って判断のポイントが示されています。

3つの事例が判断基準の項目に沿って整理され、「業務遂行上の指揮監督」「拘束性」「代替性」「報酬の労務対償性に関する判断基準」の4項目に関する判断が共通しています。

【事例1】
荷主が元請事業者に配送を委託するとともに、当該元請事業者が配送員に対して、委託契約書に基づき、再委託(配送員は個人事業主扱い)。当該配送員が業務中に負傷したことから、労災保険給付の対象となるか否かについて、当該配送員から労働基準監督署に相談があった事例

業務遂行上の指揮監督
業務の遂行状況の詳細について、アプリを通じて元請事業者に把握されており、配送の状況に変化がないような場合には、本人に対して連絡を行い、指示等が行われている。
配達先が不在の場合の顧客への電話連絡の実施や置き配の方法等に関し、研修や社内掲示等により指示が行われている。
→ 配送状況に応じて元請事業者から随時指示がなされているほか、配送時のルールについても定められ、指示が行われていたことから、業務遂行上の指揮監督ありと判断

拘束性
始業・終業時刻の定めはないが、1日の作業時間を12時間以内にすることを前提に、1日当たりの配送を行う荷物量が定められている。
→ 実態として勤務時間の裁量が低く、拘束性ありと判断

代替性
契約書において第三者への再委託が禁止されている。
→ 代替性なしと判断

報酬の労務対償性に関する判断基準
報酬は、1日当たりの日給制(18,000円)で支払われている。
→ 報酬が日単位で計算されており、労務対償性ありと判断

その他
採用選考過程は一般の労働者と同様、求人情報による募集や面接による選考が行われている。

判断
労働者性を肯定する要素、否定する要素が一定程度混在するものの、業務遂行上の指揮監督関係や時間的拘束性があり、報酬も業務に必要な時間の対価としての労務対償性が強いと認められること等を総合的に勘案し、労働基準法第9条の労働者に該当するものと判断

【事例2】
荷主が元請事業者に配送を委託するとともに、当該元請事業者が配送員に対して、委託契約書に基づき、再委託(配送員は個人事業主扱い)。報酬(賃金)不払いについて、当該配送員から労働基準監督署に相談があった事例

業務遂行上の指揮監督
荷物の配送コースについては、契約書等において、原則として元請事業者が示したルートに従わなければならない旨が定められている。当日に配送が割り当てられた荷物については、原則としてすべて配達しなければならないことや、配達先が不在の場合は、当日中に再訪問を行うこと等が契約書等において義務付けられている。また、割り当てられた荷物以外にも、追加で配送を指示される場合がある。
その他、配送時は元請事業者が指定するユニフォームの着用が義務付けられている。
→ 契約書等において配送時のルールが定められ、原則、当該ルールに基づく配送が義務付けられていることから、業務遂行上の指揮監督ありと判断

拘束性
始業・終業時刻の定めはないが、契約書等において「拘束時間は原則11時間以上」とされており、それを前提に、1日当たりの配送を行う荷物量が定められている。
→ 実態として勤務時間の裁量が低く、拘束性ありと判断

代替性
契約書等において再委託は禁止されていなかったが、実態として個人情報の保護を理由に第三者への委託は禁止する旨の説明が元請事業者からなされていた。
→ 代替性なしと判断

報酬の労務対償性に関する判断基準
報酬は、1日当たりの日給制(約20,000円)で支払われている。
→ 報酬が日単位で計算されており、労務対償性ありと判断

判断
業務遂行上の指揮監督関係や時間的拘束性が認められることや、報酬の労務対償性が強いこと等を総合的に勘案し、労働基準法第9条の労働者に該当するものと判断

【事例3】
荷主や元請物流事業者が元請事業者に配送を委託するとともに、当該元請事業者が配送員に対して、委託契約書に基づき、再委託(配送員は個人事業主扱い)。報酬(賃金)不払いについて、当該配送員から労働基準監督署に相談があった事例

業務遂行上の指揮監督
荷物の配送コースについては、元請事業者からの指示に従って、順番に配送しなければならない。契約書等により、置き配等の配送ルールが細かく定められており、ルールに従わず、顧客とクレームになった場合等については罰金をとられることとされている。
→ 契約書等において配送時のルールが定められ、当該ルールに基づく配送が義務付けられており、ルールに従わない場合は罰金をとられる等のペナルティが課されることから、業務遂行上の指揮監督ありと判断

拘束性
業務時間が、8時~17時、15時~22時、17時~24時、6時~22時、8時~24時と定められ、この中から本人が選択する。
→ 始業・終業時刻が定められ、業務時間が指定されていることから、拘束性ありと判断

代替性
本人に代わって他の者が労務を提供することは認められていない。
→ 代替性なしと判断

報酬の労務対償性に関する判断基準
報酬は、1日当たりの日給制(約15,000円)で支払われている。
また、業務時間内に荷物を配りきれない場合は、1時間当たり1,000円が別途支給される。
→ 報酬が日単位で計算されていること、また、業務時間内に荷物を配りきれない場合は、時間に応じて追加で報酬が支払われていることから、労務対償性ありと判断

判断
業務遂行上の指揮監督関係や時間的拘束性が認められることや、報酬の労務対償性が強いこと等を総合的に勘案し、労働基準法第9条の労働者に該当するものと判断