お知らせ

経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)の原案が示されました(2023/6/9)

6月7日、第8回経済財政諮問会議が開催され、「経済財政運営と改革の基本方針 2023(仮称)」が示されました。

次の5章で構成されています。

第1章 マクロ経済運営の基本的考え方
第2章 新しい資本主義の加速
第3章 我が国を取り巻く環境変化への対応
第4章 中長期の経済財政運営
第5章 当面の経済財政運営と令和6年度予算編成に向けた考え方

ここでは、第2章と第4章から、一部の内容を紹介します。

【第2章 新しい資本主義の加速】
三位一体の労働市場改革
 ・在職者への学び直し支援策
 → 5年以内を目途に、効果を検証しつつ、過半が個人経由での給付が可能となるよう、個人への直接支援を拡充する。その際、教育訓練給付の拡充、教育訓練中の生活を支えるための給付や融資制度の創設について検討する

 ・「人への投資」施策パッケージ
 → フォローアップと施策の見直し等を行うほか、雇用調整助成金について、休業よりも教育訓練による雇用調整を選択しやすくなるよう助成率等の見直しを行う

 ・「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」
 → 職務給(ジョブ型人事)の日本企業の人材確保の上での目的、人材の配置・育成・評価方法、リ・スキリングの方法、賃金制度、労働条件変更と現行法制・判例との関係などについて事例を整理し、個々の企業が制度の導入を行うために参考となるよう、中小・小規模企業の導入事例も含めて、年内に事例集を取りまとめる

 ・「成長分野への労働移動の円滑化」
 → 失業給付制度において、自己都合による離職の場合に失業給付を受給できない期間に関し、失業給付の申請前にリ・スキリングに取り組んでいた場合などについて会社都合の離職の場合と同じ扱いにするなど、自己都合の場合の要件を緩和する方向で具体的設計を行う。また、自己都合退職の場合の退職金の減額といった労働慣行の見直しに向けた「モデル就業規則」の改正や退職所得課税制度の見直しを行う。さらに、求職・求人に関して官民が有する基礎的情報を加工して集約し、共有して、キャリアコンサルタントが、その基礎的情報に基づき、働く方々のキャリアアップや転職の相談に応じられる体制の整備等に取り組む

家計所得の増大と分厚い中間層の形成
 ・中小企業等の賃上げの環境整備
 → 賃上げ税制や補助金等における賃上げ企業の優遇等の強化を行う。その際、赤字法人においても賃上げを促進するため、課題を整理した上で、税制を含めて更なる施策を検討する
 → 付加価値の適切な分配を促進するため、エネルギーコストや原材料費のみならず、賃上げ原資の確保も含めて適切な価格転嫁が行われるよう取引適正化の促進を強化する一環として、特に労務費の転嫁状況について業界ごとに実態調査を行った上で、労務費の転嫁の在り方について指針を年内にまとめる
 ・最低賃金
 → 今年は全国加重平均1,000円を達成することを含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会で、しっかりと議論を行う
 → 地域間格差の是正を図るため、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる
 → 今夏以降は、1,000円達成後の最低賃金引上げの方針についても、新しい資本主義実現会議で議論を行う
 ・「資産運用立国」の実現
 → iDeCoの拠出限度額および受給開始年齢の上限引上げについて2024年中に結論を得るとともに、NISAの抜本的な拡充・恒久化、金融経済教育推進機構の設立、顧客本位の業務運営の推進等、「資産所得倍増プラン」を実行する

多様な働き方の推進
 ・週所定労働時間20時間未満の労働者に対する雇用保険の適用拡大について検討し、2028年度までを目途に実施する
 ・良質なテレワークやビジネスケアラーの増大等を踏まえた介護と仕事の両立支援を推進するほか、勤務間インターバル制度の導入促進、メンタルヘルス対策の強化等の働き方改革を一層進めながら、副業・兼業の促進、選択的週休3日制度の普及等に取り組む
 ・フリーランスが安心して働くことができる環境を整備するため、フリーランス・事業者間取引適正化等法の十分な周知・啓発、同法の執行体制や相談体制の充実等に取り組む

【第4章 中長期の経済財政運営】
社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進
 ・医療の機能分化と連携のさらなる推進、医療・介護人材の確保・育成、働き方改革、医療・介護ニーズの変化やデジタル技術の著しい進展に対応した改革を早期に進める必要がある
 ・1人当たり医療費の地域差半減に向けて、地域医療構想を推進する
 ・医療DXの実現に向けた取組みを着実に推進し、2024年秋に健康保険証を廃止する。レセプト・特定健診情報等に加え、介護保険、母子保健、予防接種、電子処方箋、電子カルテ等の医療介護全般にわたる情報を共有・交換できる「全国医療情報プラットフォーム」の創設および電子カルテ情報の標準化等を進めるとともに、PHRとして本人が検査結果等を確認し、自らの健康づくりに活用できる仕組みを整備する
 ・健康寿命を延伸し、高齢者の労働参加を拡大するためにも、健康づくり・予防・重症化予防を強化し、デジタル技術を活用したヘルスケアイノベーションの推進やデジタルヘルスを含めた医療分野のスタートアップへの伴走支援などの環境整備に取り組む
 ・急速な高齢化が見込まれる中で、医療機関の連携、介護サービス事業者の介護ロボット・ICT機器導入や協働化・大規模化、保有資産の状況なども踏まえた経営状況の見える化を推進した上で、賃上げや業務負担軽減が適切に図られるよう取り組む。介護保険料の上昇を抑えるため、利用者負担の一定以上所得の範囲の取扱いなどについて検討を行い、年末までに結論を得る。介護保険外サービスの利用促進に係る環境整備を図る
 ・医療介護分野における有料職業紹介事業について、関係機関が連携して、事業の適正化に向けた指導監督や事例の周知を行うとともに、公的な職業紹介の機能の強化に取り組む
 ・次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担の抑制の必要性を踏まえ、必要な対応を行う
 ・勤労者皆保険の実現、年齢や性別にかかわらず働き方に中立的な社会保障制度の構築に向け、企業規模要件の撤廃など短時間労働者への被用者保険の適用拡大、常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種の解消等について次期年金制度改正に向けて検討するほか、いわゆる「年収の壁」について、当面の対応として被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせない取組の支援などを本年中に決定した上で実行し、さらに、制度の見直しに取り組む