今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書(案) が公表されています(2023/6/1)
5月30日、第8回今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会が開催され、報告書(案)が公表されました。
現在の状況を踏まえた制度的な課題として、次の4つが挙げられています。
●男性の育児休業のさらなる取得促進
●子の年齢に応じた残業をしない働き方や柔軟な働き方、休暇のニーズへの対応
●多様な状況にある子や親に関するニーズへの対応
●介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の効果的な利用促進
これに対して示された具体的な対応措置は、次のとおりです。
【子の年齢に応じた残業をしない働き方や柔軟な働き方、休暇のニーズへの対応】
●子が3歳になるまでの両立支援の拡充
・テレワークの活用促進
→ 出社・退社時間の調整などに加えて、テレワークを企業の努力義務として位置付けることが必要
・現行制度の短時間勤務制度の見直し
→ 現行の制度を引き続き維持することが必要
→ 原則1日6時間とする措置を設定したうえで、他の勤務時間も併せて設定することを一層促していくことが必要
→ 上記の短時間勤務が困難な場合の代替措置の一つに、テレワークも追加することが必要
●子が3歳以降小学校就学前までの両立支援の拡充
・柔軟な働き方を実現するための措置
→ 短時間勤務制度または所定労働時間を短縮しないテレワーク、出社・退社時間の調整(フレックスタイム制を含む)もしくは休暇などの柔軟な働き方を措置する制度の中から、事業主が各職場の事情に応じて、2以上の制度を選択して措置を講じる義務を設けることが必要
・残業免除(所定外労働の制限)
→ 残業免除(所定外労働の制限)について、3歳以降も請求を可能とすることが必要
→ 請求できる期間については、小学校就学前までとすることが適当
・子の看護休暇制度の見直し
→ 取得目的については、子の行事(入園式、卒園式など)参加や、感染症に伴う学級閉鎖等にも活用できるよう見直しを行い、あわせて名称の在り方も検討していくべき
→ 1年間の取得日数は現行の5日(子が2人以上の場合は年10日)を維持するべき
→ 取得可能な子の年齢については、小学校3年生の修了までに引き上げることが必要
【仕事と育児の両立支援制度の活用促進】
●制度の活用をサポートする企業や周囲の労働者に対する支援
→ 代替要員の雇用や周囲の労働者の負担軽減を行う中小企業に対する助成措置の強化や、企業規模にかかわらず、制度利用者がいる職場の業務量・達成目標の見直しや体制の整備などに関するノウハウの共有などが必要
●育児休業取得状況の公表や取得率の目標設定について
→ 300人超の事業主についても、男性の育児休業取得状況の公表が義務付が必要
→ 企業規模が小さい場合には、公表時期を2年度に1度とすることや、公表時に社内の状況についても説明できる仕組みを設けるなどの配慮を行うことが必要
→ 男性の育児休業取得率の目標を掲げる場合には、取得率だけでなく、男性の育児休業取得日数や育児・家事時間等も含めた目標の検討が必要
【次世代育成支援に向けた職場環境の整備】
・一般事業主行動計画について、数値目標の設定やPDCAサイクルの確立のような手法を、指針ではなく法律上の仕組みとして規定することが必要
・一般事業主行動計画の策定にあたっての基本的な考え方として、男性育児休業の促進、子育て期を含めたすべての労働者の時間外労働の縮減や柔軟な働き方の促進等の事項を盛り込むことについて具体的に示すことが必要
・行動計画に盛り込むことが望ましい事項として、企業全体の方針、両立支援制度の利用者に対する取組み、個々の職場の管理職や上司に対する取組みに関する項目を策定指針で示すことが必要
【介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の周知の強化等】
●仕事と介護の両立支援制度の情報提供や、制度を利用しやすい雇用環境の整備の在り方
・家族の介護の必要性に直面した労働者が申出をした場合に、企業が、仕事と介護の両立支援制度等に関する情報を個別に周知することが必要。また、その際に、両立支援制度の本来の目的を十分に説明したうえで、仕事との両立に必要な制度が選択できるよう労働者に対して働きかけることも必要
・企業が、介護保険の第2号被保険者となる 40 歳になるタイミングをとらえるなどして効果的な時期に、労働者に対して、両立支援制度の情報を記載した資料などを配付するなどの情報提供を一律に行うことが必要。その際、介護保険制度の内容をあわせて周知することが望ましい
・企業が、介護保険制度や両立支援制度に関する社内セミナーや研修の開催、相談窓口の設置など雇用環境の整備を行うことが必要
●介護休業
・情報提供等に取り組むことが必要
・加えて、各企業で就業規則等において制度を定める際に、企業独自の名称への変更への変更により、制度の趣旨が伝わりやすくなる工夫が考えられる旨周知していくことが望ましい
●介護期の働き方(介護休暇や短時間勤務等の選択的措置義務、テレワークの在り方等)
・介護休暇について、継続して雇用された期間が6カ月未満の労働者を労使協定によって除外できる仕組みは廃止することが必要
・テレワークについては、介護期の働き方として選択肢の一つとして位置付けていくことが望ましく、介護期の働き方として、テレワークを選択できるように努めることを企業に求めることが必要
【障害児等を育てる親等、個別のニーズに配慮した両立支援について】
●現行の仕事と介護の両立支援制度の運用の見直し
・子に障害がある場合や医療的ケアを必要とする場合にも、子が要介護状態の要件を満たせば、介護休暇等の制度も利用可能であることや、必要な措置を講ずる努力義務が事業主に課されていることについて、周知を強化するべき
・現行の要介護状態の判断基準について、子に障害がある場合等では解釈が難しいケースも考えられることから、さらに検討することが今後の課題
●育児中の労働者に対して個人の意向を尊重する配慮
・社内の制度以外に、勤務時間帯や勤務地、制度の利用期間などに関する希望など、個人の意向を聴取するよう企業に義務付けることが必要。また、個人の意向聴取後、企業はその意向を尊重することが適当
・その際、子に障害がある場合等に限らずすべての労働者を対象とすることが適当であるため、個人の意向を聞く機会は、妊娠・出産(本人または配偶者)の申出時の育児休業取得に関する意向確認の際に一律に行うこととすることが必要。さらに、育児休業からの復職時、小学校就学前まで両立支援制度を利用する中で実施する定期的な面談時などの際にも行うことも望ましいと考えられる
【仕事と育児・介護との両立支援にあたって必要な環境整備】
●プライバシーへの配慮
→ 妊娠・出産等、家族の介護に関する情報が適切に管理されるよう、社内で共有する範囲を定めるといった配慮を事業主に求めることが望ましい
●心身の健康への配慮
→ テレワークやフレックスタイム制などを活用する場面では、事業主の配慮(勤務間の休息時間(いわゆる勤務間インターバル)や勤務時間外の業務へのアクセス状況の確認、面談による労働者の健康状況への配慮等)を促すことが望ましい
→ 事業主による配慮だけでなく、労働者自身もセルフケアなどを促すことも望ましい
●有期雇用労働者の育児休業取得等の促進
→ 有期雇用労働者の育児休業取得要件緩和の着実な施行に向けて取り組んでいくべき
→ 産前・産後休業の制度と併せて周知していくことが重要
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